はじめに
「たずねる」には「訪ねる」と「尋ねる」があって、意味によって使い分けますが、ひらがなの「たずねる」もよく目にします。そのため、ひらがなで書かなくてはいけない「たずねる」もあるのかなと不安になったりしないでしょうか。
必ずひらがなにしなければならない「たずねる」はありませんので心配は無用です。ただ、「たずねる」には次のように大きく3つの意味がありますよね。
①訪れる/訪問する
②探し求める/教えてもらう
③質問する/問う
このように3つの意味があるのに、漢字は「訪ねる」と「尋ねる」しかありません。それで、ひらがなが好まれる「たずねる」があるんですね。
今回は「たずねる」の表記についてまとめていきたいと思います。
「①訪問する」場合は「訪ねる」と書きます
①の「訪れる」の意味の場合は「訪ねる」にします。「訪問」と「訪ねる」は漢字が同じですから迷いがないですね。誰かに会いに行くこともありますし、旅行などで特定の場所を訪れることもありますが、どちらも「訪ねる」にします。
(訪れる/訪問する)
・友人を訪ねる。
・部長の家を訪ねてみた。
・古都を訪ねてみたい。
・ヨーロッパを訪ねたことがある。
「②探し求める」場合は「尋ねる」と書きます
「②探し求める」の意味なら「尋ねる」にします。「母を尋ねて三千里」の「尋ねる」ですね。アニメでは「たずねる」とひらがなになっていますが、これは対象が子どもであることに配慮したものだと考えられますので、漢字で書くなら「尋ねる」です。
「訪ねる」とどう違うのかというと、「訪ねる」は、行き先が決まっていて、そこをめがけていくのに対して、「尋ねる」は、不明なものを痕跡や歴史などを手がかりにしてたどっていくイメージです。居所がわかっているお母さんに会いに行くなら「訪ねる」ですが、どこにいるかわからないけれども、手がかりを頼りに探すことなら「尋ねる」になります。
また、わからないことを教えてもらうことも「尋ねる」にします。自分が知りたいことを明らかにする行為は「探し求める」の仲間なんですね。
(探し求める/教えてもらう)
・地元の人に道を尋ねる。
・先生に勉強法を尋ねてみよう。
・母を尋ねて北海道に行った。
・日本人のルーツを尋ねてみたい。
「③質問する」場合は「尋ねる」(または「たずねる」)にします
「③質問する」という場合はも「尋ねる」にします。ただ、「たずねる」とひらがなになっていることが多いのも、この場合の「たずねる」です。
どうしてかというと、「質問する」の「たずねる」は、本来は「訊ねる」と書きますが、常用漢字ではないため「尋ねる」で代用しているんですね。でも、そうすると「訊ねる」の意味から離れてしまうため、あえてひらがなにすることもあるようです。
では、「尋ねる」と「訊ねる」はどう違うのかというと、「尋ねる」は「知らないことを教えてもらう」ことですが、「訊ねる」は「質問する/問う」ことです。つまり、「尋ねる」だと相手が優位ですが、「訊ねる」だと自分が主導する立場になります。「問い詰める」という意味もあります。
公用文でもマスコミ表記でも、どちらの意味も「尋ねる」を用るように示していますが、インタビュー記事などでは「たずねる」になっていることも多く目にします。「尋ねる」のほうが謙虚な表現ですので、特にこだわりがなければ「尋ねる」で問題ないと思いますが、ひらがなにしたい場合はご自身の語感に従ってくださいね。
(質問する/問う)
・年齢をお尋ねします。
・出身地を尋ねてもいいですか。
・遅れた理由を尋ねているんです。
・尋ねられて困ることがあるんですか?
まとめ
・「訪問する」意味なら「訪ねる」にする
・「探し求める」場合は「尋ねる」にする
・「質問する」場合も「尋ねる」にする
・「質問する」場合は「たずねる」とひらがなにすることもある
今回は「訪ねる」と「尋ねる」の使い分けについてまとめてみました。何か役に立つことがあったら幸いです。最後まで読んでくださってありがとうございました。