はじめに
「たえる」というときに、「耐える」と「堪える」のどっちにしようか迷ったことはないでしょうか。どちらも「持ちこたえる」という意味なので使い分けに困りますよね。
「堪える」は「堪えない」の形で用いることがとても多いかと思いますが、「堪えない」には意味が2通りあるんですね。もしかすると、そのあたりが迷ってしまう原因かもしれません。
そこで今回は「耐える」と「堪える」の意味の違い、そして「堪えない」の使い方についてまとめていきたいと思います。
「耐える」の意味:「我慢すること/持ちこたえること」
まず、「耐える」ですが、これは「我慢すること/持ちこたえること」で、苦しいことやつらいこと、外部からの圧力などをこらえることをいいます。この使い方は特に迷いはないと思います。
・苦痛に耐える
・痛みに耐える
・寒さに耐える
・圧力に耐える
・空腹に耐える
・貧困に耐える
・耐えられない悲しみ
・悲しみを耐え忍んで生きてきた
・これ以上はつらくて耐えられない
「堪える」の意味①:「価値がある/能力がある」
「堪える」には「価値がある」や「能力がある」という意味があります。逆に、「価値がない」とか「能力がない」というときには「堪えない」になります。
・鑑賞に堪える作品だ。
(=鑑賞する価値のある作品だ。)
・批評に堪える論文である。
(=批評する価値のある論文である。)
・任に堪える人物を推薦してほしい。
(=任を果たす能力がある人物を推薦してほしい。)
・見るに堪えない映画だった。
(=見る価値のない映画だった。)
・読むに堪えないくだらない内容だ。
(=読む価値のないくだらない内容だ。)
「堪える」の意味②:「持ちこたえる」
「堪える」にも「持ちこたえる」という意味がありますが、これは「耐」と意味が重なってしまいます。「耐荷重」や「耐久性」との整合から、性能などは「耐」が好まれますが、「堪える」がふさわしい場合も当然ありますので、文脈によって選んでみてくださいね。
では、「耐える」とどう違うのかというと、「耐える」は苦しいことをじっと辛抱することですが、「堪える」は、保有している力によって難局を乗り切るようなイメージでしょうか。人物であったり、素材であったり、そうしたものの持てる力を強調したい場合には「堪える」にします。
・彼ならきっと堪えてくれるはずだ。
・この素材は過酷な使用に堪えます。
「堪えない」の意味:「気持ちが抑えられない」
ほかに、「堪えない」には「気持ちが抑えられない」という意味があります。よく使われるのは「感謝の気持ちに堪えません」という言い方かもしれません。これは「感謝する気持ちが抑えられません」、つまり「感謝の気持ちでいっぱいです」という意味になります。
・感謝の気持ちに堪えません。
(=感謝する気持ちが抑えられません。)
(=感謝の気持ちでいっぱいです。)
同じように、「自責の念に堪えません」であれば「自分を責める気持ちでいっぱいです」という意味ですし、「遺憾の念に堪えません」であれば「とても残念な気持ちでいっぱいです」という意味になります。
・自責の念に堪えません。
(=自分を責める気持ちが抑えられません。)
(=自分を責める気持ちでいっぱいです。)
・遺憾の念に堪えません。
(=遺憾に思う気持ちが抑えられません。)
(=とても残念な気持ちでいっぱいです。)
「感に堪える」と「感に堪えない」が同じ意味なのはなぜ?
「感に堪える」も「感に堪えない」も、どちらも「非常に感動する」ことをいいます。反対のことを言っているのに同じ意味だなんておかしい気もしますよね。
これまで述べてきたように、「感に堪える」の「堪える」は「価値がある」という意味ですから、「感動する価値がある」ということです。
一方、「感に堪えない」の「堪えない」は「抑えられない」という意味なので、こちらは「感動を抑えられない」という意味になります。
結果として、どちらも「非常に感動する」という意味になるんですね。
まとめ
・「耐える」は「我慢すること/持ちこたえること」です。
・「堪える」は「価値がある/能力がある」ことです。
・「堪えない」は「気持ちが抑えられない」ことです。
・「感に堪える」と「感に堪えない」は同じ意味です。
今回は、「耐える」と「堪える」の違い、そして「堪えない」の使い方についてまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました。