はじめに
「うかがう」というと、すぐに思い浮かぶのは「伺う」ですよね。でも、「伺」の漢字が当てはまらないこともあります。そうなんです。「うかがう」はひらがなで書かなければならない場合があるんです。今回は、「伺う」と「うかがう」の使い分けについて、用例をもとに確認していきたいと思います。
(「伺う」を使う)
・お話を伺ってもいいですか?
・ご自宅に伺いたいのですが。
(「うかがう」を使う)
・夫の顔色をうかがう。
・隣の部屋の様子をうかがう。
・主役を座を奪うタイミングをうかがう。
・チャンスが到来するのをうかがう。
「伺う」と書くのはどんなとき?
「伺う」というのは、「聞く・尋ねる/訪問する」という意味の謙譲語です。謙譲語というのは敬語のひとつで、自分を相対的に低くする言い方のことです。具体的な用例で見ていきましょう。
(「聞く・尋ねる」の謙譲語)
・貴重なお話を伺わせていただきました。
・そのお話を伺ってもいいですか?
・私からいくつか伺わせていただきます。
(「訪問する」の謙譲語)
・ご自宅に伺ってもいいですか。
・あした、午後2時に伺います。
・彼女の実家に伺うのは気が引ける。
このように「聞く/尋ねる」「訪問する」の意味の場合は「伺う」と漢字で表記します。
「聞く・尋ねる」の意味ではひらがなも好まれますが、基本的には謙譲語の「伺う」はどちらも漢字にして問題ありません。
名詞形の「お伺い」の扱いについて
「伺う」は、「伺い/お伺い」の形で名詞形になることがあって、「ご機嫌伺い」や「暑中伺い」のように用います。
また、「お伺いを立てる」という言い回しはよく用いられますよね。「お伺いを立てる」というのは、「①神仏に祈ってお告げを乞う」という意味と、「②目上の人などの意見を仰ぐ」という意味があります。
「お伺い」は、通常は「い」を送りますが、例外があって、書類の題名としての「進退伺」は慣用として送りがなを省きます。「進退伺」というのは、仕事をしていて重大なミスをしてしまったときに、「私はどのようにしたらよいでしょうか」と上司の判断を仰ぐために提出するものです。
・暑中伺い
・ご機嫌伺い
・お伺いを立てる
※進退伺
「うかがう」とひらがなにするのはどんなとき?
「うかがう」とひらがなにするのは、「窺う」に当てはまる場合です。「窺」は常用漢字ではないため、ひらがなで「うかがう」にするんですね。
「窺」はどのような意味なのかというと、「①そっと様子を見る」「②好機をじっと待つ」という意味があります。それぞれ用例で見ていくことにしましょう。
(①そっと様子を見る)
・外の様子をうかがう。
・夫の顔色ばかりうかがっている。
・しばらくは動向をうかがうことにしよう。
(②好機をじっと待つ)
・逃げ出すすきをうかがっていた。
・主役の座を奪うタイミングをうかがおう。
・チャンスが到来するのをうかがうことにする。
このような意味であれば、ひらがなで「うかがう」にします。
「うかがい知る」「うかがえる」の意味と使い方
「うかがい知る」は「見当がつく」という意味で、「おおよその内容をうかがい知ることができた」などと用います。
同じような意味で「うかがえる」もよく使います。「彼がどれだけ空腹だったかがうかがえる」であれば、「彼がどれほど空腹だったか見当がつく」という意味になります。
これらは、漢字で書けば「窺」の意味であることから、ひらがなで「うかがい知る」や「うかがえる」と書きます。
(うかがい知る)
・おおよその内容をうかがい知ることができた。
(うかがえる)
・彼がどれだけ空腹だったかがうかがえる。
まとめ
・「聞く/尋ねる/訪問する」の意味の「うかがう」は「伺う」にする。
・名詞形の「伺い/お伺い」は「い」を送るが、「進退伺」は送らない。
・「窺う」に当てはまる場合はひらがなで「うかがう」と書く。
・「窺う」には「そっと様子を見る」「好機をじっと待つ」の意味がある。
・「うかがい知る」「うかがえる」もひらがなで表記する。
今回は「伺う」と「うかがう」の使い分けについてまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました。



