はじめに
「誠にありがとうございます」などというときの「まことに」は「誠に」と書いてありますよね。「まこと」は「真」とも書けそうですが、どうして「誠」なのか不思議に思ったことはありませんか? そもそも「誠」と「真」はどう違うのでしょうか。今回は「まこと」に関する表記についてまとめていきたいと思います。
「まこと」の漢字には「誠/真/実」があります
「まこと」とは「本当」という意味ですが、国語辞典で「まこと」を引くと「誠/真/実」の3つの漢字が併記されています。つまり、「本当」という語には大きく3種類の意味があるということなんですね。
まこと=本当
「本当に感謝しています」なら、「とても感謝しています」という意味で「誠」の字が当てはまります。「それは本当でしょうか」であれば「それは真実でしょうか」という意味なので「真」が当てはまります。「本当は私がやりました」というときには「実は私がやりました」という意味で「実」が当てはまるんですね。
(「本当」の3つの意味)
①誠:本当に感謝しています。(とても)
②真:それは本当でしょうか。(真実)
③実:本当は私がやりました。(実は)

なるほどね。「まこと」の漢字の意味が理解できたわ。
「まこと」という読みがある漢字は「誠」だけです
このように漢字によって少しニュアンスが異なりますが、「まこと」という読みがあるのは「誠」だけです。念のため常用漢字表で確認してみましょう。
(常用漢字表より)
誠 |セイ |誠実,誠意,至誠
|まこと |誠,誠に
真(眞)|シン |真偽,写真,純真
|ま |真南,真新しい,真っ先
実 |ジツ |実力,充実,実に
|み |実,実入り
|みのる |実る,実り
「真」にも「実」にも「まこと」という読みはありませんので、「まこと」を漢字で書こうと思ったら「誠」しか選ぶことができません。

名前の「まことくん」だったら「誠くん」も「真くん」も「実くん」もいるけどね。
「誠に」は「本当に」の改まった言い方です
冒頭で触れたように、「まこと」は、多くの場合、「まことに」という副詞の形になって、「とても/非常に」という意味で用いられます。これは「本当に」の改まった言い方なんですね。この場合は「誠に」と漢字で書きます。もちろん、ひらがなでも問題ありませんが、原則は「誠に」になります。
・誠にありがとうございます。
・誠におめでとうございます。
・誠においたわしいことです。
・誠に恐れ入りますが……
・誠に恐縮ですが……
「まことの話/うそかまことか」はかな書きにする
注意しなければならないのは「誠」の意味ではない場合です。「まことの話」や「うそかまことか」などの場合は「真」の意味ですが、「真」には「まこと」という読みはありません。それでどうするかというと、「まことの話」や「うそかまことか」のようにひらがなにします。
「真実」の意味の「まこと」は文語ですので、時代劇などでは頻出しますが、日常会話においてはほとんど出番はないかもしれませんが、念のため頭に入れておいてくださいね。
(ひらがなの「まこと」)
・まことの話
・うそかまことか
・それはまことか?
・まことのことでございます。

「真実」の意味の「まこと」は確かに大河ドラマの世界だね。
「まっしろ」や「まっさお」はどう書くの?
「まっしろ」や「まっさお」は「真っ白」「真っ青」と書きます。この場合の「真」は「「本当の」という意味を有した接頭辞になります。
・真っ白
・真っ青
・真っ赤
・真後ろ
・真正面
「実は/実に」はそのまま漢字で書きます
「実」は「まこと」とは読まないものの、「実(じつ)」の形で用いられ、多くは「じつは/じつに」という副詞の形になります。この場合、「実は/実に」と漢字で書きます。副詞なのでひらがなも散見されますが、公用文では「常用漢字内で書ける副詞は漢字で書く」という原則がありますので、漢字で問題ありません。
しかも、「実」という漢字は「本当」という意味そのものですから、特にこだわりがなければ「実は/実に」と漢字で表記してくださいね。
・実は私がやりました。
・実は骨折していたんです。
・実に興味深い話だ。
・実に嘆かわしいことです。
「まことしやか」とはどんな意味?
「まことしやか」というのは、「いかにも本当であるかのように」という意味です。例えば、まことしやかにうそをついたり、まことしやかなうわさが立ったり、まことしやかな都市伝説が存在したりします。
「まことしやか」を漢字にすると「実しやか」になります。「真しやか」にしている辞書もありますが、いずれにせよ、「実」にも「真」にも「まこと」という読みはないために、ひらがなで「まことしやか」にするんですね。
・彼女はよく、まことしやかなうそをつく。
・黒いうわさがまことしやかにささやかれている。
・都市伝説がまことしやかに語り継がれてきた。

「まことしやか」って「実しやか」なのね。
まとめ
・「まこと」の漢字には「誠/真/実」があります。
・「まこと」という読みがある漢字は「誠」だけです
・「誠に」は「本当に」の改まった言い方です
・「まことの話」や「うそかまことか」などはひらがなにします。
・「まっしろ/まっさお」は「真っ白/真っ青」などとします。
・「実は/実に」はそのまま漢字で書きます
・「まことしやか」は「いかにも本当であるかのように」という意味です。
今回は「まこと」という漢字の「誠」「真」「実」についてまとめてみました。最後までおつきあいいただきありがとうございました。


