はじめに
日本では、小学校、中学校、高等学校という区分が長く用いられてきましたが、ここへきて、小学校と中学校が一緒になった「義務教育学校」がとても増えてきています。また、従来から「中等学校」の形をとっている学校もありました。このように学校の形がどんどん変わってきているんですね。
このことは、個に応じた教育が浸透してきたことのほかに、子どもの数が少なくなって学校の統廃合が進んでいることと無関係ではありません。まさに時代に応じた変化ということなのだと思います。
これらの学校は、それぞれどんな特徴があるのでしょうか。また、何が違うのでしょうか。今回は、それぞれの違いを調べてみることにしました。
「義務教育学校」と「中等教育学校」について
「義務教育学校」は2016年に導入された比較的新しい制度で、小学校から中学校までの9年間の義務教育を一体的に行う学校です。小学1年生~6年生の期間を「前期課程」、中学1年生~3年生の期間を「後期課程」といいますが、学校によっては4-3-2制や5-4制にしているところもあります。
一方、「中等教育学校」は1998年に導入されました。こちらは中学校から高校までの6年間を一体的に教育する学校です。中学1年生~3年生の期間を「前期課程」、高校1年生~3年生の期間を「後期課程」と呼びます。
| 義務教育学校 | 中等教育学校 | |
| 対象期間 | 小学校から中学校の9年間 | 中学校から高校の6年間 |
| 課程 | 前期課程(小学校段階) 後期課程(中学校段階) | 前期課程(中学校段階) 後期課程(高校段階) |
義務教育学校が生まれた背景は?
義務教育学校は、小学校から中学校までの9年間を一貫して教育を行う新しい学校の形として2016年に制度化されました。この制度が誕生した背景には、主に3つの社会的課題があります。
1.「中1ギャップ」の解消
小学校と中学校の学習や生活環境の違いから、中学校に進学する際に学習意欲が低下したり、不登校やいじめが起きやすくなる問題がありました。そこで9年間の一貫したカリキュラムを編成することで、このギャップの緩和・解消が期待されています。
2.多様で質の高い教育の実現
少子化が進行すれば、それぞれの学校で多様な教育を提供することが難しくなってしまいます。義務教育学校にすれば、9年間を4-3-2制や5-4制など柔軟な学年区分に設定できるため、教科担任制を早期に導入するなど、専門的で質の高い教育を提供できます。また、小学校と中学校の教員が連携することで、生徒一人ひとりの個性や発達状況に応じたきめ細かな指導が可能となります。
3.地域の実情に応じた学校運営
児童生徒数の減少が進む地方においては廃校になってしまう学校が増えていますが、小学校と中学校を統合して義務教育学校を設置することにより学校の維持や教育環境の充実を図ることができます。このように、義務教育学校は、小規模校の閉校を防ぎ、地域の教育を継続的に支える役割も担っています。
中等教育学校が生まれた背景は?
中等教育学校は、1998年の学校教育法改正によって制度化されました。このころは、受験一辺倒の教育を解消して質の高い教育を実現しようとする目的がありました。つまり、「ゆとり教育」が提唱された時代に生まれたのが中等教育学校です。
1.多様化する教育ニーズへの対応
1990年代の日本は、画一的な教育から脱却する必要性が高まっていました。学習指導要領の見直しが進み、詰め込み教育を是正する「ゆとり教育」が提唱され、受験競争を緩和して、より探求的な学習や体験的な学習に時間を割くための仕組みが求められました。中等教育学校は高校受験の負担がなくなりますので、6年間でゆとりのある教育を展開できると考えられました。
2.社会の変化と国際競争力の強化
グローバル化が進む中で、国際的な競争力を高めるために、創造性や思考力を持つ人材を育成することが急務となっていました。単なる知識の暗記ではなく、自ら課題を見つけ、解決する能力が求められるようになったため、教科横断的な学習や総合的な学習を柔軟に取り入れることができる中等教育学校に、その役割が期待されました。
「小中一貫校」や「中高一貫校」との違いは?
ここで注意しておきたいのが「一貫校」との違いです。どのように違うのかというと、「義務教育学校」は、1つの学校組織の中で継続した教育活動が行われるものであるのに対し、小学校と中学校は別の学校だけれども、連携して一貫した教育を行うのが「小中一貫校」です。
同じように、「中等教育学校」は1つの組織の中で継続した教育活動が行われるのに対し、中学校と高等学校は別の組織だけれども、連携して一貫した教育を行うのが「中高一貫校」です。
ただし、「義務教育学校」や「中高教育学校」であっても、「一貫した教育を行っている学校」という意味で「小中一貫」や「中高一貫」というように説明している場合がありますので、どのような意図で「一貫」が用いられているかは該当する学校のホームページなどで確認するようにしてください。「義務教育学校」や「中高教育学校」は1つの学校ですので、校長先生も1人です。
「初等教育機関」「中等教育機関」「高等教育機関」とは?
学校の種類を理解する上で教育段階を表す言葉を知っておくと役立ちますので、少し触れておきたいと思います。
「中等教育機関」は中学校、「高等教育機関」というと高校での教育だと思ってしまいがちですが、そうではありません。
初等教育:小学校に相当する教育
中等教育:中学校と高校に相当する教育
高等教育:高校卒業後に更に学ぶための教育
「初等教育機関」は小学校に該当するものをいいます。「中等教育機関」は「中学校/高等学校」に相当する教育を行う機関です。「高等教育機関」は、高校を卒業したあとにさらに高度な内容を専門的に学ぶ機関で、具体的には大学や短大などが挙げられます。
「高等専門学校(高専)」は、高校と短大に該当する期間にまたがりますが、区分としては「高等教育機関」になります。
最適な教育環境は個によって異なります
義務教育学校や中等教育学校は、組織の形態が異なりますが、学習指導要領は同じですので学習内容が異なることはありません。
連続した教育を受けられる学校では、受験に気を取られたり環境の変化に戸惑ったりしなくていい反面、人間関係が固定化してしまい「心機一転」ができにくい側面がありますので、一長一短といったところでしょうか。
社会人になってみると、職場にはどうして異動のシステムがあるのか理解できるものですが、子どものうちは大変です。大人になると最大の強みとなる「個性」も、子どものうちは苦労することが多いものですので、どうにか子ども時代を乗り切っていただきたいと思います。
注目されるオーダーメイドな教育の形
ただ、最近の教育のトレンドとして、こうした既存の枠組みにとらわれず、学年の枠を超えて学習を進める無学年方式も注目されています。得意な分野はどんどん先に進めて、苦手な分野は時間をかけてじっくり学ぶなど、子どもの個性を生かす教育が広まってきています。
例えば、オンライン教材の「すらら」の無学年方式はその例でしょう。文科省や経産省をはじめとた数々の賞を受賞していることからも、このような柔軟な教育の在り方がどれだけ注目されているかをうかがい知ることができます。学習の場は学校だけではなくなってきているようです。
通信制の高校や大学は珍しくなくなりましたので、これから義務教育期間をどうするのか、こうした取り組みから目が離せません。もちろん、学校での教育活動は教育の骨格を成すものですが、「誰一人取り残さない」という意味において多様な学習形態にも注目したいと思います。
無学年式「すらら」このように学習の形は時代とともに変化しています。全員が同じ最適解にはなりえませんので、それぞれにふさわしい学習環境や教育方針をじっくり検討してみてくださいね。
最後まで読んでくだってありがとうございました。


