「つく/付く/着く/就く/突く」の使い分け:「身につける」はどう書くの?

表記の決まりごと

はじめに

「つく」というときに、「付く」にするか「着く」にするか迷うことって多いですよね。表記辞書によっても扱いがさまざまなのが、この「付く」と「着く」です。

例えば、「身につける」というとき、新聞表記では、知識や技能は「身に付ける」、衣服や装身具は「身に着ける」にしているのに対し、公用文とNHKではどちらも「身に着ける」にしていますし、逆に議事録表記では、誤解のないよう、どちらも「身につける」と書きます。このように、日本語の表記で最も統一されていないもののひとつが「つく/つける」ではないかと思います。

これだけ異なる「付」の扱いですが、語感の違いはそれぞれありますから統一するのは難しいように思います。

とはいえ、必ずひらがなにするものは共通していますので、これを押さえておくことと、一定の法則を頭に入れておくとかなり使い分けやすくなりますので、今回は「付く」と「着く」についてまとめてみたいと思います。あわせて、「就く」と「突く」にも触れてみますね。

あらかじめお断りをしておきたいのは、公用文や新聞表記、そして議事録表記やNHK表記においては、共通する部分もあれば異なっている部分もありますし、原則はそうだとしても現場での運用が異なっている場合もあります。

ですから、最終的にはご自身のお立場や語感に合うものを選んでください。また、どの漢字も語感に合わないと感じる場合はひらがなも上手に活用してみてくださいね。

ひらがなにする「つく」は案外多い

まず、必ずひらがなにするものを押さえておくことにしたいと思います。これを押さえるだけでかなり使い分けで迷わなくなります。

漢字は「付/着/就/突」のみ

常用漢字で「つく」と読む漢字は「付く/着く/就く/突く」の4字だけです。それ以外にも「つく」という漢字はたくさんありますが、この4字以外はみんな「つく」とひらがなにします。

必ずひらがなにする「つく」

下に示した「つく」は必ずひらがなにします。理由は、「衝く/撞く/吐く/点く/搗く/即く」は常用漢字表において「つく」という読みを示していないためです。念のため目を通してみてください。

「テレビをつける」「電気をつける」などの言い方の場合には「つける」とひらがなにしますが、これは、該当する漢字が「付」ではなく「点」であるためです。「うそをつく」「ため息をつく」もひらがなです。

「つく」の用例「つく」の漢字漢字の意味
不意をつく
矛盾点をつく
鼻をつく
衝く(※)攻める
刺激する
鐘をつく
まりをつく
つえをつく
撞く(※)打ち当てて鳴らす
弾ませる
押す
うそをつく
ため息をつく
悪態をつく
吐く口から出す
電灯がつく
テレビがつく
ランプがつく
点くともる
スイッチが入る
餅をつく
米をつく
地面をつく
搗くうすときねでつく
木で強く打つ
王位につく即く即位する

ただし、「衝く」や「撞く」は「突く」で代用する立場なのが新聞表記です。ですから、「急所を突く」「鐘を突く」としても間違いではありません。公用文、議事録表記、NHK表記は、ひらがなで「つく」にします。

慣用として「つく」にするもの

また、新聞表記では、以下のものは慣用としてひらがなにするとしています。これらは新聞表記だけではなく一般的に共通したひらがなの使い方ですので、ひらがなで書いてください。また、ここに示したものだけではなく、漢字の「付/着/就/突」のいずれにも当てはまらないと感じる場合はひらがなにしてくださいね。

・板につく
・顔つき
・嗅ぎつける
・決着をつける
・差がつく
・つけあがる
・はねつける
・2位につける
・見つける
・横綱に土がつく

ここまで、主にひらがなにするものをまとめてきました。これだけでもかなりすっきりするのではないかと思います。

さて、次からはいよいよ「付」「着」「就」「突」の意味とつか方を確認していきましょう。もうしばらくおつきあいください。

「付」の漢字はどういう意味?

まず、「付」の漢字の持つ意味を確認しておきたいと思います。「付」は、「与える」とか「託す」とか「くっつける」という意味で、主に「加える」ことに用いられます。こちら側から相手側へ渡すようなイメージの漢字です。

付属 付加 付与 付録 付表
還付 寄付 添付 配付 送付

「付」を用いる用例

「付」は主として「○○付け」や「付け○○」という形で、何かを加えたり加わっている場合に用います。単独で「~を付ける」「~が付く」とするのは限定的です。

・植え付ける
・受け付ける
・備え付ける
・据え付ける
・貸し付ける

・付け合わせる
・付け替える
・付け足す
・付け根
・付け回す
・付け目
・付け焼き刃
・付け加える
・付け毛
・付け人(大相撲)
・付き人(芸能一般)

「付く」の意味でもひらがなが好まれるもの

意味としては「付」の仲間であっても、次のようなものはひらがなが好まれます。ただし、これは表記の決まりではありませんので「付」を用いることもできます。語感に応じて使ってください。

ひらがなが好ましい「つく」
・知恵がつく
・汚れがつく
・勝負がつく
・物心がつく
・見通しがつく

ひらがなが好ましい「つける」
・印象づける
・嗅ぎつける
・叱りつける
・乗りつける
・たきつける
・はねつける

「着」の漢字はどういう意味?

「着」は、向こうからこちらに移動してくる場合や、くっついた状態が続くことを表す漢字です。すき間なくぴったりくっついている場合にも用います。

着信 着手 着任 着想 着色
到着 決着 付着 密着 愛着

「着」を用いる用例

「着」は「到着」することのほかに「身につける」という意味もありますので、「装着」に言い換えられる場合は「着」を用います。

「地に足が着かない」は「着地」との整合から「着」を用います。「交渉のテーブルに着く」は交渉に応じるという意味ですが、「着座」との整合から「着く」にします。語感に合わない場合は「つく」にしてください。

・手紙が着く
・席に着く
・落ち着く
・服を身に着ける
・足が地に着かない
・議員バッジを着ける
・腕章を着ける
・喪章を着ける
・義足を着ける
・船が岸に着く
・マスクを着ける
・まわしを着ける
・交渉のテーブルに着く
・シートベルトを着ける

「装着する」という意味であっても、新聞表記の『記者ハンドブック』では、「胃ろうを付ける」「人工呼吸器を付ける」「タイヤチェーンを付ける」を用例として示しています。個人的には「着ける」のほうがいいようにも感じてしまいますが、このあたりは難しいですよね。

混乱を回避するため、議事録表記ではみんな「つける」にしている理由がおわかりいただけるのではないかと思います。このように、表記は統一されていないことは念頭に置いてみてください。

「汚れ」や「ごみ」は「付く」のか「着く」のか

「汚れがつく」や「ごみがつく」のように「付着」に言い換えられる場合はどうすればいいのでしょうか。「付」は「くっつける」、「着」は「くっついている」という意味合いが強い漢字ですが、特にこだわりがなければ「つく」とひらがなにします。

ちなみに、「付着」の意味の場合、新聞表記や公用文では「付」にしますが、NHKと議事録表記ではひらがなで「つく」と書くように示していますので、語感に合うほうを選んでください。

「就」の漢字はどういう意味?

「就」は、あるところに近寄っていってそのままとどまること、あるいは、近寄った先のものに従うことに用います。自分から近寄っていくのが特徴です。

就任 就職 就寝 就学 就業

「就く」を用いる用例

「就く」は「就職」「就学」「就寝」などの熟語がありますから比較的用いやすいのではないかと思います。また、意味が限定的で迷いもありません。

注意したいのは「緒(しょ)に就く」でしょうか。これは「見通しがつく」とか「糸口が開ける」という意味で、「やっと緒についたばかりです」などと用います。「ちょにつく」という読み方もありますが、これは慣用読みですので、間違いではないものの、正式には「しょにつく」になります。

・職に就く
・帰途に就く
・守備に就く
・定位置に就く
・会長職に就く
・持ち場に就く
・床(とこ)に就く
・緒に就く(しょにつく)

「突」の漢字はどういう意味?

「突」の漢字は穴から犬が飛び出してきた様子から生まれた漢字で、つきでる、つきだす、ぶつかる、しのぐというような意味があります。

突入 突出 突起 突発 突風
猪突猛進

「突く」を用いる用例

「突く」は「突き○○」の形で用いられることがほとんどです。

・突き上げる
・突き当たる
・突き出す
・突き返す
・突き刺す
・突き飛ばす
・突き抜ける
・突き詰める
・突き進む

単独で「突く」を用いることもありますが、「針の先で突く」のように「つつく」の意味で用いる場合に限られていて、多くは「つく」とひらがなにします。なぜかというと、「つく」の項で述べたように、「突く」は実際には「衝く」や「撞く」の意味であることが多いためです。

ただし、「衝く」や「撞く」を「突く」で代用するのが新聞表記ですので、この立場に立てば「急所を突く」「鐘を突く」とすることもできます。公用文、議事録表記、NHK表記は、ひらがなで「急所をつく」「鐘をつく」にします。

このあたりは語感の違いもあると思いますので、それぞれの判断で書き分けてみてください。

おわりに

「ツケで買う」の「ツケ」というのはご存じでしょうか。その場では支払わず、帳簿に記しておいてもらい、あとでまとめて支払う方法を「ツケ払い」といいます。今は電子決済になったので、ほとんど用いないのではないかと思いますが、カード払いも一種の「ツケ払い」のようなものですね。決済方法が変化してきたことで、「ツケ」ということばもなくなっていくのかもしれません。

今回は「つく/付く/着く/就く/突く」の使い分けをまとめてみました。できるだけわかりやすくお伝えしようと頑張ってみましたが、まとまりがつかずに、かえってわかりにくい部分もあったかもしれません。力不足の点はご容赦ください。なにがしか参考になればうれしく思います。

最後まで読んでくださってありがとうございました!

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