「一生懸命」と「一所懸命」はどう違うの? どう使い分ければいいの?

気になることば

はじめに

私たちは「一生懸命(いっしょうけんめい)」という語を本当によく用いますよね。「一生懸命頑張ります」とか「一生懸命勉強します」などと用います。

でも、「一所懸命(いっしょけんめい)」という表記も目にしませんか? ワープロソフトの変換候補にも出てくるのでちょっと混乱してしまいますよね。

実は「一生」は「一所」から派生したもので、いわば当て字なんです。もともとは「一所懸命」が用いられていたようなんです。今では一般には「一生懸命」が用いられますが、新聞表記やNHK表記では「一所懸命」は「歴史的表記」に指定して限定的に用いるように示しているです。

いったいどういうことなんでしょうか。今回は「一生懸命」と「一所懸命」の違いについて探っていきたいと思います。

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「一所懸命(いっしょけんめい)」とはどういう意味?

前述したように、「一生懸命」は、もともとは「一所懸命」でしたが、これが転じて「一生懸命」になりました。

「一所」とは「一つ所」という意味で、中世の武士が命を懸けて守る領地のことを「一所懸命の地」と呼んでいたそうです。そこからだんだんと「武士が命懸けで領地を守ること」を「一所懸命」と言うようになりました。

つまり、中世の武士階級の人が、一族の生活基盤となる土地を必死で守り抜いた、それが「一所懸命」だったんですね。それが次第に、土地を守ること以外にも用いられるようになりました。

「一生懸命(いっしょうけんめい)」とはどういう意味?

このように、もともとは武士が土地を守ることを「一所懸命」といいましたが、土地を守らなくても「一所懸命」が用いられていきました。時代が進んで武士が領地を守る必要がなくなってからも「一所懸命」が使われ続けていったんですね。

でも、そうすると、もとの意味を忘れてしまいますよね。それで、「いっしょ」という発音が「いっしょう」と似ていたために「一生」に置き換わっていったんですね。

現在では、「一生懸命」がスタンダードになり、「命懸けで事に当たること」といった意味で用いられるようになっています。

「一生懸命」とは?
・命懸けで事に当たること
・一心に骨を折ること
・いちずな気持ちで取り組むこと

「一所懸命」と「一生懸命」はどう使い分ければいいの?

「一所懸命」と「一生懸命」は意味が同じですから、どっちを使っても間違いではありませんが、新聞表記やNHK表記においては、「一所懸命」は「歴史的な表記」として扱って、「一所懸命の地」のように限定的に用いるように示しています。

つまり、武士の時代に土地を守ったことに関しては「一所懸命」を使って、私たちの日常など一般的なことであれば「一生懸命」にするというように使い分けるように示しているんですね。

「一所懸命」という歴史的な表記は、ご専門の方以外はあまり触れる機会がないかもしれませんが、例えば『キングダム』という人気漫画&アニメががありますよね。あの中では「一所懸命」が用いられていました。『キングダム』のストーリーは領土をめぐる争いを経て国家統一を目指すものですので、確かに「一所懸命」がふさわしいですね。

命は「懸ける」? 命を「賭ける」?

「一生懸命」とは命懸けで頑張ることですが、「命をかける」というときは「懸ける」でいいのでしょうか。それとも「賭ける」でしょうか。

「懸命」と書きますから、「いのちがけ」という言い回しの場合は「命懸け」を用いるように示されています。したがって、「命をかける」というときも、「命を懸ける」にするのが順当な判断です。

ただ、「懸ける」も「賭ける」も、どちらも「投入する」という意味があって、「身命を賭する(しんめいをとする)」という言い方があるように、「命を賭ける」と書くこともできます。

実際には、「とす」の場合には「賭す」、「かける」の場合には「懸ける」が好まれるようですが、最近はひらがなの「かける」がとても多く用いられるようになりました。このあたりも時代の変化ということなのかもしれません。

まとめ

・「一所懸命」は「武士が命懸けで領地を守ること」という意味です。
・「一所懸命」は「歴史的な表記」とされ、限られた文脈で用います。
・「一生懸命」とは、「命懸けで事に当たること」という意味です。
・「一生懸命」は一般的な表記で、基本的には「一生懸命」を用います。

今回は「一生懸命」と「一所懸命」の違いについてまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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