国の名前なのに読み方がたくさんある日本
皆さんは、「日本」を「にっぽん」と読むでしょうか、「にほん」と読むでしょうか。そもそもどっちが正しいのでしょうか。
NHKのアナウンサーさんが「にっぽん」と意識して発音されているのは印象的ですよね。ですから「にっぽん」が正しいような気がしてしまいますが、答えは「どっちでもいい」ということなんですね。なんだか拍子抜けしてしまいますが、無理やり決められるよりずっといいと思います。実際、NHKであっても、国名として用いる場合以外は「にほん」を許容しています。「日本的(にほんてき)」とか「日本舞踊(にほんぶよう)」などの場合ですね。
それだけでなく、英語表記でさえも「NIPPON(ニッポン)」と「JAPAN(ジャパン)」の両方あって、どちらも普通に使用しているわけですから、日本は自国名にかなり寛容です。このゆるさが私は好きですけれどもね。

「ニッポン! チャチャチャ」っていう応援が好き!
どうして国名が「日本」なったの?
日本の国名についてですが、昔、日本は中国から「倭(わ)」と呼ばれていました。『三国志』の『魏志倭人伝』は歴史で習いましたよね。日本人は、自分たちは「わ」なんだと認識したわけですが、「倭」が蔑称だったことを知ってびっくりしたんだと思います。私も漢和辞典を引いてみたら「倭」は「背が曲がってたけの低い小人の意」とあるではありませんか。だから「倭」ではなくて「和」を使おうということにしたんですね。
日本の国家統一は「大和朝廷」によるものだったので、日本の国号は「大和(やまと)」になりました。「大きな和」の国ですね。そして、「日出ずる国である大和」とか、「日の本である大和」というように形容しているうちに、「日本」と書いて「やまと」と読むようになり、だんだんと本来の読みである「にほん」や「にっぽん」になったということらしいです。「本」には「おこりはじめ」という意味がありますので、「日本」は日がおこりはじめる、太陽が昇るという意味だと思われます。
世界地図を見てみても、日本は東の端っこにあって、世界の中でもいち早く太陽が昇る国です。昔の人たちもちゃんとそのことを認識していたんですね。もちろんもっと東にある国もあって、世界で最も早く次の日を迎えるのは、太平洋上に位置するキリバス共和国だそうです。

「倭」にはそういう意味があったなんて知らなかった。
日本のことをどうして「JAPAN(ジャパン)」というの?
「ジャパン」という言い方は、マルコ・ポーロが『東方見聞録』の中で、日本のことを「ジパング」と呼んだため、「ジパング」から「ジャパン」になったのではないかという説が有力です。
では、どうして「ジパング」かというと、「日」は「ニチ」のほかに「ジツ」とも読みますので、「ジッポンコク」という読み方から「ジパング」になったのかもしれません。または、そのまま「ニッポンコク」が「ジパング」に聞こえたのかのかもしれません。そのあたりは私には調べきれませんでしたが、いずれにしても、「日本国」と発音したら「ジパング」と伝わってしまったようです。「パ」の音が入っているということは、「本」は「ホン」ではなく「ポン」だったと推察されます。
どうして「にほん」か「にっぽん」に統一しないの?
国名だからどちらかに統一したい、できれば「にっぽん」にしたいという動きはかねてからあったようです。実際、1934年の臨時国語調査会では「にっぽん」にすることが決定されました。ところが、政府はそれを採択しませんでした。つまり、進言されたけれども従わなかったことになります。
戦後になってもこの問題は浮上していて、1970年に佐藤栄作内閣が「日本」の読み方について、「『にほん』でも間違いではないが、政府は『にっぽん』を使う」として、「にっぽん」で統一する旨の閣議決定を行いましたが、法制化にまでは至らなかったそうです。
確かに自国の国号に関することですから、急に上から決められて、それで解決する問題ではないと思いますし、ことばには歴史がありますから、「にほん」でも「にっぽん」でもいいというのはとてもよい判断だと思います。それに、そんなに心配しなくても、オリンピックがよい例ですが、私たちも国号とそれ以外で自然に使い分けていますよね。

「ニホン! チャチャチャ」はないわね。
公式な英語表記は「JAPAN」?「NIPPON」?
それでは公式な英語表記はどうなのかというと、日本政府の各種公文書、旅券の国名・国籍表示などにおいては、日本国の公式な英語表記として「JAPAN」が用いられ、郵便切手や日本銀行券などでは「NIPPON」が使用されているとWikipediaに書いてありました。公式な英語表記もどちらもあるんですね。ただし「NIHON」はありません。
「にほん」も「にっぽん」も、「JAPAN」も「NIPPON」も、好きなものを選べるなんて、表現が豊かでいいことだと考えれば、みんなハッピーになれるのではないでしょうか。

確かにお札には「NIPPON」とあるけど、ナンチャラペイばっかり使っていて、お札をあまり使わなくなっちゃったな。
■参考文献
この記事は以下のものや各種辞典を参考にし、自分の考察を加えて執筆しました。
・国号「日本」の読み方について 三宅武郎
・日本はなぜ「JAPAN」と呼ばれるようになったのか? Business Journal
・日本国号に関する質問主意書 衆議院
・『日本語150の秘密』沢辺有司(彩図社)
・Wikipedia「ジャパン」のページ