その「なれる」は「慣れる」でいいの? 

気球に乗ったウサギのイラスト もう迷わない 漢字のチョイス

「なれる」には「慣れる」「馴れる」など複数の意味があります

「なれる」は日常生活の中に浸透している表現ですが、いろいろな意味があります。「なれた手つき」とか「人になれた猫」などですね。なれすぎると「なれてるんじゃないよ」と叱られてしまいます。また、郷土料理に「なれずし」というものもありますよね。それぞれ漢字で書くとすると、「慣れた手つき」「人に馴れた猫」「狎れてるんじゃないよ」「熟れ寿司」となります。

「慣」は常用漢字ですが、「馴」「狎」は表外字ですので「なれる」にします。「熟」は「ジュク」または「うれる」とだけ読ませますので、「なれる」という場合はひらがなにします。つまり、「慣れる」以外はみんな「なれる」とひらがなで書きます。「馴れる」は常用漢字のように思われるかもしれませんが、表外字なんですね。

念のため、それぞれどんな意味なのか確認してみましょう。

①慣れる:何度も経験して普通のことになる。
②馴れる:警戒心がなくなってなつく。なじんでくる。
③狎れる:近い関係になってけじめがつかなくなる。
④熟れる:食べ物が熟して食べ頃になる。

「慣れる」以外は「なれる」にすればいいんだから簡単だね。

例文で確認してみましょう

慣れる
・新しい仕事に慣れてきたよ。
・使い慣れた財布は捨てたくない。
・住み慣れた土地を離れるのはつらい。
・聞き慣れない名前だな。
・そこにあるのは見慣れた光景だった。
馴れる(「なれる」と書きます)
・この牛は人になれていておとなしい。
・友達の子が私になれてるの。
・靴がなれて履きやすくなってきたよ。
・なれ合いはよくないぞ。
狎れる(「なれる」と書きます)
・店になれて入り浸って迷惑だ。
・あいつ、なれていい気になってるな。
・なれてしまったら僕たちの関係は終わりだよ。
熟れる(「なれる」と読む場合はひらがなにします)
・1週間ほどしてなれてきたら食べ頃です。
・十分になれたみそだからおいしいよ。
・なれずしは独特の味わいだよ。(※「なれずし」は日本の郷土料理)
○「熟れる」はそのままだと「うれる」と読みます

・この柿はちょうど熟れておいしそうだ。
・熟れすぎて食べられなくなっちゃった。

○「熟れる」は「こなれる」とも読みますが、ひらがなで書きます

・芸がこなれてきましたね。
・さすが、人間がこなれている。

「慣れる」以外は知らない漢字だった。表外字だから目にしてこなかったのね。

「なれなれしい」ってどういう意味?

特に親しい関係ではないのに、親密であるかのような態度を「なれなれしい」といいますよね。漢字で書けば「馴れ馴れしい」、もしくは「狎れ狎れしい」ですが、これはひらがなで「なれなれしい」と書きます。

・なれなれしい態度が気に入らない。
・なれなれしい話し方はやめてくれ。
・知らない人からなれなれしく声をかけられた。

「なれそめ」って漢字でどう書くの?

カップルやご夫婦に対して、「なれそめは?」などと質問したりしますが、これを無理やり漢字にすれば「馴れ初め」になります。なれて親しくなる最初のきっかけのことですね。

「馴れる」は「なれる」ですね。「そめ」は「初め」とも書けますが、「なれそめ」という慣用句になっているので、そのまま「なれそめ」と表記します。

「なれそめは?」とか聞かれてみたいけど、出会いがないんだよな。