「ごぞんじ」は「ご存じ」と書きます
「ごぞんじ」は、「ご存じのように~」などと用いられますが、「ご存じ」と「ご存知」の両方の表記を見かけることがあります。これはどちらが正しいかというと「ご存じ」なんですね。「ご存知」の「知」は当て字ですから、通常は用いません。
「ご承知のとおり」の「承知」は漢字なのに、どうして「存知」ではないのか疑問に思われるかもしれません。「ご承知のように~」と「ご存じのように~」はほぼ同じ意味で用いられたりしますよね。
でも、これはもともとの語と活用が異なるんです。「承知」は「承知+する」で「承知する」という動詞になりますが、「存知+する」で「存知する」にはなりません。これが決定的な違いです。つまり「ご存じ」はもともとは「存する」の連用形で、それに接頭語の「ご」が付いて「ご存じ」になったものなので、「ごぞんじ」は「ご存じ」と表記するんですね。

「承知」と発音が似てるから「存知」にしたくなるんだよな。
「存ずる」や「ご存じ」はどういう意味なの?
「存ずる」というのは、「考える」や「思う」の謙譲語で、「ありがたく存じます」というように用います。これは自分のことですね。また、「心得る」「知っている」の謙譲語でもあって、「存じ上げる」の形でもよく用いられます。
・もちろん、この問題は存じておりました。
・お名前を存じ上げておりませんで失礼いたしました。
「ご存じ」はは相手方が知っていることを丁寧に言う場合に用いられます。ですので、「ご存じかと思いますが」は「知っていらっしゃると思いますが」という意味になります。
・ご存じかとは思いますが、念のため申し上げます。
・このことはご存じだったはずでありませんか。

「恐悦至極に存じます」ってよく時代劇で使われているわよね。
「知らぬ存ぜぬ」ってどういう意味?
「知らぬ存ぜぬ」は「知らないふりをして一貫して語らない」という意味の慣用句です。「知らぬ」も「存ぜぬ」も、どちらも「知らない」ですから、同じ意味の言葉を重ねて強調しているんですね。「しらを切る」に似ているかもしれません。
・いつまで知らぬ存ぜぬで通すつもりなの?
・社長なんだから、知らぬ存ぜぬでは済まないわよ。
「存する(そんする)」ってどういう意味?
「存する(そんする)」という表現もありますよね。この場合、送りがなが「ズ」ではなく「ス」になります。
「存する」は「存在すること」の意味です。少し堅苦しい表現なので日常会話ではあまり使わないかもしれません。普通に「ある」を用いますよね。ただ、特に「在る」ことを強調したい場合に「存する」という言い方をすることがあります。
(例文)
・確固とした事実がそこに存するのです。
・この固有種が存するのはこの地域だけになった。
・地球上に人類が存するかぎり、我々は活動し続ける。
まとめ
存ずる:自分が「思う」「考える」の謙譲語
存する:存在すること 存続すること
「存じます」は、学生のときまではほとんど使いませんでしたが、社会人になると使用頻度が上がります。「思います」を「存じます」にするだけで、かなり社会人っぽくなりますし、メールの文面にもところどころに「存じます」を用いると謙譲語らしくなるので便利に使っています。使い過ぎはしつこい印象になってしまいますが、これからも「ご存じ」や「存じます」を上手に用いていきたいと「存じます!」