美しい日本の色
日本の伝統色は、その色のみならず、名称がとても美しいものが多いですよね。季節感があったり、鳥や宝石の名前を使っていたりと、文章表現の中でも大活躍です。
種類もたくさんあってとても覚えきれませんが、これはというものをピックアップしてみました。豊かな表現の一助になれば幸いです。
なお、色がイメージしやすいように色見本を添えましたが、ネット環境等によって実際の色と違って見えることがありますのでご容赦ください。
――鮮やかで象徴的な「赤」――

朱色(しゅいろ)#B7282E
神社のお社や鳥居を思い浮かべる、少し黄色みがかった鮮やかな赤です。魔除けの意味もあり、日本の風景を象徴する色ですね。
茜色(あかねいろ)#B7282E
夕焼け空を思い浮かべる、深く沈んだ赤。最古の染料の一つ「茜」の根で染めた色で、万葉集の時代から歌に詠まれてきた歴史があります。
薄紅(うすべに)#f0908d
紅花(べにばな)で薄く染め上げた、柔らかく華やかなピンク色です。桜色よりも少し赤みが強く、春のうららかな陽気や、内側からぽっと色づくような可憐な感情を表現するのに重宝します。
緋色(ひいろ)#D3381C
火のような鮮やかな黄色みの赤。「スカーレット」に近い色合いです。平安時代には、位の高い貴族に許された「禁色(きんじき)」の一つでもありました。
臙脂(えんじ)#B94047
深く、黒ずんだ赤。現代でも学校のジャージやネクタイなどで馴染みがありますが、もともとは「えんじ虫」という虫から採れる染料の色です。
――淡く情緒的な「ピンク」――

桜色(さくらいろ)#FEF4F4
ご存知、桜の花びらのような淡いピンク。日本人の情緒に最も深く関わっている色といえるかもしれません。
鴇色(ときいろ)#F4B3C2
国際保護鳥であるトキの、翼の裏側の羽の色です。桜色よりも少し黄色みがかった、優雅な和風ピンクです。
撫子色(なでしこいろ)#DC9FB4
秋の七草、カワラナデシコの花の色。少し紫がかったピンクで、しとやかな日本女性を例える「大和撫子」のイメージそのものです。
桃花色(ももはないろ)#e198b4
桃の花が開いたときのような、明るく瑞々しいピンク色です。桜色よりも少し赤みが強く、春の陽光を浴びて華やかに微笑むような、生命力あるかわいらしさを描写するのに適しています。
東雲色(しののめいろ)#F19072
明け方の空が東のほうから次第に明るくなっていく様子を思わせる、黄みがかった明るいピンク色です。古くから「東雲」は夜明けを指す言葉であり、一日の始まりを告げる希望を感じさせる色ですね。
―― 深く静かな「青」 ――

藍色(あいいろ)#165E83
「ジャパン・ブルー」として世界的に知られる、日本を象徴する青です。染め重ねる回数によって「栴檀(せんだん)」「縹(はなだ)」など細かく名前が変わる、奥の深い色です。
瑠璃色(るりいろ)#1E50A2
宝石のラピスラズリのような、深く鮮やかな紫がかった青です。仏教における七宝の一つでもあり、至上の美しさを持つ聖なる色とされてきました。
露草色(つゆくさいろ)#38A1DB
早朝に咲く露草の花のような、明るく澄んだ青です。万葉集の時代から「移ろいやすさ」の象徴として歌に詠まれてきた、情緒あふれる色合いです。
浅葱色(あさぎいろ)#33A6B8
新撰組の隊士たちが羽織っていた薄い青緑色です。「浅葱」とは薄いネギの葉の色のこと。「ターコイズブルー」や「シアン」に近い、非常に鮮やかで目を引く青です。
青磁色(せいじいろ)#74A5A3
青磁の器に見られるような、淡く澄んだ青緑色です。高貴で静かな輝きを持ち、清涼感のある上品なたたずまいに、ひときわ美しく映える色です。
―― 黄金色に輝く「黄」 ――

山吹色(やまぶきいろ)#FFB11B
晩春に咲く山吹の花のような、鮮やかな黄金色です。小判(お金)の隠語として時代劇でもおなじみですが、文章表現では「まぶしいほどの豊かさ」や「春の終わりの陽光」を瑞々しく描くのに最適です。
菜の花色(なのはないろ)#FFEC47
春の訪れを告げる菜の花のような、明るく鮮やかな黄色です。 濁りのない純粋な明るさを表現したいときに、読み手の心にパッと春の陽だまりのような暖かさが広がる色です。
黄土色(おうどいろ)#c39143
大地そのものを思わせる、深く落ち着いた黄色です。人類最古の顔料の一つでもあり、どっしりと構えた安定感や、素朴で飾り気のない誠実さを表現したいときにぴったりの色ですね。
朽葉色(くちばいろ)#91732F
秋の地面を彩る落ち葉のような、少し赤みや茶色を含んだ渋い黄色です。平安時代から愛されてきた色で、季節の移ろいや「滅びの美」を象徴します。
海松茶(みるちゃ)#5A5432
海藻の「海松(みる)」のような、深く渋みのある黄緑色がかった茶色です。江戸時代には、派手さを抑えたこの「粋(いき)」な色合いが洒落者の間で大流行し、着物の色としても非常に好まれました。
―― 生命の息吹を感じる「緑」 ――

萌黄色(もえぎいろ)#AAB300
春先に芽吹く若草のような、黄色みの強い鮮やかな緑です。平安時代には若さを象徴する色として、若武者の鎧(よろい)の糸などにも好んで使われました。
常磐色(ときわいろ)#007B43
松や杉のように、一年中葉を落とさない常緑樹の深い緑です。「常に変わらない」ことから、長寿や繁栄を願う縁起の良い色として親しまれてきました。
鶯色(うぐいすいろ)#928C36
春を告げる鳥、ウグイスの羽のような、少し茶色みがかった渋い緑です。江戸時代には、その控えめで粋(いき)な色合いが庶民の間で大流行しました。
千草色(ちぐさいろ)#92B5A9
露草の青に少しだけ緑を混ぜたような、明るく柔らかな青緑色です。「千の草」という名の通り、野に咲く草花のような素朴で親しみやすい美しさがあり、江戸時代には日常着の色として広く愛されました。
若竹色(わかたけいろ)#5DAC81
すくすくと伸びる若い竹のような、明るく瑞々しい緑色です。若さや生命力にあふれたこの色は、爽やかな初夏の風や、真っ直ぐに成長する力強さを文章に添えたいときに適しています。
―― 高貴さと神秘の「紫」 ――

若紫(わかむらさき)#BC64A4
『源氏物語』を象徴する、少し赤みのある明るい紫です。単なる「紫」よりも若々しく、気品の中にも可憐さが漂う表現として、人物の佇まいを描写する際に非常に重宝します。
江戸紫(えどむらさき)#745399
江戸っ子が好んだ、少し青みのある渋い紫です。「粋(いき)」の象徴であり、歌舞伎の助六の鉢巻の色としても有名です。都会的で凛とした強さを表現したい時に。
菫色(すみれいろ)#7058A3
春の野にひっそりと咲くスミレの花のような、鮮やかでいてどこか慎ましやかな紫です。万葉の時代から愛されてきたこの色は、可憐な美しさや、春の訪れを感じさせる瑞々しい感性を文章に添えたいときにぴったりです。
菖蒲色(あやめいろ)#674196
初夏に咲くアヤメの花のような、少し赤みを含んだ明るい紫です。古くから魔除けの力があると信じられてきた菖蒲(あやめ)にちなみ、凛とした気品や、五月の爽やかな光の中に佇むような優雅さを表現するのに適しています。
紫苑色(しおんいろ)#68699b
秋の野に咲く紫苑の花のような、少し淡く落ち着いた紫です。平安時代には貴族の衣服にも好んで使われ、どこか懐かしさと上品さが同居する、情緒あふれる色合いです。
―― 全てを包み込む「黒」 ――

漆黒(しっこく)#0D0015
漆塗りの器のように、深く艶(つや)やかな黒です。光を吸い込みつつも、どこか凛とした輝きを放つこの色は、最高級の気品を表す色とされています。
墨色(すみいろ)#464A41
書道で使う墨を水で含ませたような、温かみのある黒です。単なる「真っ黒」ではなく、微妙な濃淡の中に無限の広がりを感じさせる、日本文化の根幹にある色です。
濡羽色(ぬればいろ)#000B17
「濡れたカラスの羽」のような、しっとりと艶(つや)のある黒です。単なる黒ではなく、光を反射して青や紫がかって見えるミステリアスな輝きを指します。
鈍色(にびいろ)#727171
どんよりとした曇り空や、炭を思わせる濃い灰色です。平安文学では喪に服す際の色として描かれることが多く、言葉にできない深い悲しみや、静かな落ち着きを表現する際に重宝されます。
消炭色(けしずみいろ)#524e4d
火を消した後の炭のような、少し青みを含んだ暗い灰色です。真っ黒よりもどこか柔らかく、落ち着いた静寂や「わびさび」を感じさせる、非常に日本的な黒といえます。
―― 清らかで神聖な「白」 ――

月白(げっぱく)#E6EAE6
月が東の空に昇る際、空がだんだんと白んでいく様子を思わせる、ごくわずかに青みを含んだ白です。真っ白とは異なる、静かで幻想的な夜の気配を漂わせることができ、冷たさの中にもどこか柔らかな光を感じさせる表現にぴったりです。
生成色(きなりいろ)#FBF8EF
漂白する前の、素材そのものの色を生かした淡いベージュのような白です。「何にも染まっていない」素朴な美しさは、現代の暮らしにも馴染む心地よさを持っています
胡粉色(ごふんいろ)#FFFFFB
貝殻を粉にした顔料の色で、少し黄色みのある温かい白です。日本画や雛人形の顔の塗装に使われる「日本の白」の代表格。単なる無機質な白とは違う、柔らかな質感が特徴です。
卯花色(うのはないろ)#F7FCFE
初夏に咲くウツギ(卯の花)の花のような、少し青みを含んだ鮮烈な白です。古くから和歌では、その白さを「雪」や「雲」に例えて詠まれてきました。
乳白色(にゅうはくしょく)#f3f3f3
ミルクのように白く濁った、柔らかな白です。陶磁器のなめらかな質感や、朝靄(あさもや)のような優しく温かみのある白を表現したいときにふさわしい色ですね。







