はじめに
「わく」には「沸く」と「湧く」という似た意味の漢字があって、お湯は「沸く」で、泉は「湧く」なので簡単!と思っていると、意外に迷ったりしますよね。例えば「会場がわく」はどうでしょう。「勇気がわく」はどっちでしょう。「拍手がわく」はどっちにしますか?
なぜ迷うのかというと、「沸く」は「沸騰する」以外にも、感情表現として「熱狂する」ことにも使われますし、「湧く」は具体的なものが「わき出る」以外に、抽象的なものが「わき出る」場合にも使うからなんですね。
沸く:沸騰する/熱狂する
湧く:具体的なものがわき出る/抽象的なものがわき出る
今回は「沸く」と「湧く」の違いと使い方を、用例をたくさん用いながら丁寧に解説していきたいと思います。
後段で触れますが「湧く」はひらがな表記のほうがなじみがある方もいらっしゃるかもしれません。以下の解説を読んでみて、語感に合うものを選んでくださいね。
それでは、詳しく見ていくことにしましょう。
「沸く」の意味と使い方
沸く① 液体が熱せられて熱くなる
「沸く」は、もともと液体が熱せられて熱くなることです。お湯が沸いたり、お風呂が沸いたり、牛乳が沸いて吹きこぼれたりしますよね。
・やかんのお湯が沸いた。
・お風呂が沸いたので入ってください。
・牛乳が沸いて吹きこぼれてしまった。
・鍋のスープがぐつぐつ沸いている。
・パスタをゆでるために湯を沸かす。
・火山地帯では地面の下で熱水が沸いている。
沸く② 気持ちや場が熱狂する
それだけではなくて、人の気持ちや場の熱気が高まる場合にも用います。まるで沸騰するお湯のように、場の空気が一気に盛り上がるイメージです。
・優勝の瞬間、会場は歓声に沸いた。。
・楽しい漫才に客席がどっと沸いた。
・満塁ホームランで球場が沸いた。
・その知らせに胸が沸き立った。
・血が沸き立つような興奮を味わった。
・新記録に日本中が沸きに沸いた。
「湧く」の意味と使い方
「湧く」は、何かが「自然発生的に」出てくることをいいます。水や温泉だけでなく、石油が湧いたり、霧が湧いたり、虫が湧いたりします。
湧く① 具体的なものがわき出る
・地下水が湧き出る。
・温泉が湧いている。
・油田から石油が湧いた。
・川辺には朝霧が湧いていた。
・夏場はコバエが湧きやすい。
・降って湧いたような災難だ。
湧く② 気持ちがわき出る
また、感情や考えなど、目に見えないものが心の中に生じる場合にも使われます。内側から自然に生じる感情や発想に用います。
・勇気が湧きました。
・やる気が湧かない。
・興味が湧いてきた。
・アイデアが次々と湧いてくる。
・愛着が湧いている品物です。
・怒りが湧き上がった。
「拍手がわき起こる」はどう書く?(使い分けのポイント)
「沸く」と「湧く」の境界線は少し難しいところがあるんですね。例えば、「拍手がわき起こる」は「沸き起こる」「湧き起こる」の両方が使われます。
熱狂的にみんなが一斉に拍手したのなら「拍手が沸き起こる」ですが、パラパラという拍手からだんだんと会場全体に広がっていったのなら「湧き起こる」になります。このあたりは書き手に委ねられています。
・拍手が沸き起こる(会場の人がみんな一斉に大きな拍手をする)
・拍手が湧き起こる(パラパラとした拍手からだんだんに広がる)
「湧」は2010年の常用漢字表改定で追加された漢字です。そのため、以前は新聞や公的ま文章では「わく」とひらがな表記にしていましたので、今でもひらがなのほうがなじみがある方もいらっしゃるかもしれません。
現在では常用漢字になりましたので、公的な書類やライターの方など、表記のルールを重んじる場合はどちらかに当てはめることになりますが、個人のブログやSNSなど、自分の感性を大切にしたい場合は「ひらがな」も選択肢に入れてもいいかもしれませんね。
まとめ
今回は「わく」の使い分けについてお届けしました。
沸く:沸騰する/熱狂する
湧く:わき出る/生じる
温度や熱量を表現するなら「沸く」、内側から「生じる」場合は「湧く」という使い分けのキホンを押さえたら、あとは語感に合う表記を選んでみてくださいね。
最後まで読んでくださってありがとうございました!






