はじめに
希望を意味する「夢」と、寝ているあいだにみる「夢」と、どちらも同じ「夢」なのがとっても不思議ですよね。全く別のものなのに、どうして同じ語になったのでしょうか。これは心理学などでもよく語られるテーマですが、どちらも「非現実」という点では共通しています。
睡眠中の夢:脳内で体験している「非現実」
未来の夢:心の中で描いている「非現実」
そんな興味もあって、今回は「夢」の語源と副詞の「ゆめゆめ」の使い方を探っていきたいと思います。また、なんと、縁起がいい初夢とされる「一富士二鷹三茄子」には続きがあったようですので、それについても意味を解説していきたいと思います。
「夢」の語源は「寝目」でした
考えてみると、英語の「ドリーム(dream)」も、日本語と同じように、就寝中の「夢」も、将来の希望の「夢」も、どちらも同じ語で表現しますよね。
英語の「ドリーム」には、もともとは「希望」の意味はなかったようです。「将来の希望」という意味で使われ始めたのは比較的新しく、中世以降の文学的な表現から広まったという説が有力です。つまり、「眠っている時に見る不思議なビジョン(夢)を、手の届かない理想や目標になぞらえて表現するようになったんですね。
日本語の「夢」は「い(寝)+め(目)」、つまり「寝ている時に見えるもの」が由来とされています。古くは「はかないもの」や「不吉な予兆」として捉えられることが多かったのですが、近代になって西洋の「ドリーム」のポジティブな概念が流入し、両方の意味を持つようになりました。
「ゆめ」の語源=「い(寝)+め(目)」
「夢」に2つの意味があるのはロマンチックですが、どちらも現実のものではないという意味では、少しはかない気もします。そのあたりも共通する部分なのかもしれませんね。
「一富士二鷹三茄子」は六番目まで続きがあります
さて、縁起がいい夢としてよく「一富士二鷹三茄子」などといいますよね。実はこれには続きがあるんです。
一富士(いちふじ)二鷹(にたか)三茄子(さんなすび)四扇(しおうぎ)五煙草(ごたばこ)六座頭(ろくざとう)
それぞれ、どうして縁起がいいのか、ここで簡単に確認しておくことにしたいと思います。
①富士:「富士山」には広大な裾野が広がることから、末広がりや子孫繁栄の象徴とされます。
②鷹:鷹は「高」と同音で、獲物をつかみ取る習性があることから、高い位をつかみ取ることができるとされます。
③茄子:「茄子」は「生(な)す/成す」と同音であることから、子をなしたり財を成したりできるとされます。
④扇:「扇」は、その形が「末広がり」であるため、縁起が良いモチーフとしてさまざま用いられます。
⑤煙草:嗜好品の煙草(たばこ)は高価であり、煙が上に昇っていくさまから、運気が上昇するとされます。
⑥座頭:座頭とは剃髪(ていはつ)した盲目の僧侶のことで、「毛がない」は「ケガがない」として「家内安全」を意味します。
結局、初夢はいつみる夢なの?
初夢はいつの夜の夢のことなのか、いつも議論になりますが、これは大きく3つの説があるようです。
1.大みそかから元日の朝にかけて(江戸時代初期まで)
2.元日の夜から2日の朝にかけて(江戸時代中期から)
3.2日の夜から3日の朝にかけて(書き初めや初商いの日に合わせた説)
江戸時代、大みそかは一晩中起きていることが多かったため、「新年になって初めて寝る夜」というと「元日の夜」になります。そのため、2日の朝に目覚めたときの夢が「初夢」とする考え方が定着しているようです。
ただ、そのあたりは無理に決めなくてもいいのかもしれません。もしも元日によい夢が見られなかったら、2日の夜が本番! とリトライできたほうが楽しいですよね。ぜひ、ご自分の都合のよいように解釈してみてくださいね。
ひらがなの「ゆめ」や「ゆめゆめ」とはどういう意味?
ところで、「ゆめ」は副詞としても用いられることがあります。文語的な表現ですが、禁止の表現を伴って「ゆめ○○なかれ」などと用いるんですね。これは「絶対に○○するな」という意味です。
この「ゆめ」は「忌む」がもともとの形ですが、漢字で書けば「努々」で、努めてそうしなさいという意味です。ただ、常用漢字表では「努」を「ゆめ」とは読ませませんから、「ゆめ」や「ゆめゆめ」などとひらがなにします。
(「努/努々」の「ゆめ」)
・ゆめ、疑うなかれ。
・ゆめゆめ、忘れるなかれ。
ところが、この「ゆめ」が「夢」のことと勘違いされたため、「夢にも思っていませんでした」という意味で「ゆめゆめ思ってもいませんでした」などと使われるようになりました。
現在では「夢にも」の意味で用いられることのほうが多くなりましたが、どちらの意味であってもひらがなで「ゆめ」や「ゆめゆめ」と表記するのが新聞やNHKなどマスコミなどの表記のルールになっています。
(「夢/夢々」の「ゆめ」)
・ゆめ、思いもしませんでした。
・ゆめゆめ、想像もつきませんでした。
まとめ
・「夢」の由来は寝ているときの「寝目」で、「将来の希望」の「夢」は後に加わった
・縁起のいい初夢の「一富士 二鷹 三茄子」は六番目まで続きがある
・副詞の「ゆめ」は「努」の意味だったが、「夢」だと勘違いされた使い方が広まった
今回は「ゆめ」の語源と縁起のいい初夢についてまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました!


