「やばい」の温故知新|昭和以前の「やばい」から現代の「やばい」の意味の変化をひもとく

なりきり知識人

はじめに

「このスイーツ、やばい!」「テストの結果がやばい」「その服、やばくない?」などと、私たちは何かにつけ「やばい」を使っていますよね。「やばっ!」で事済んでしまうくらいとっても身近な言葉になりました。

やばい=「やば」+「い」

「やばい」とは、名詞の「やば」に「い」を付けて形容詞にした造語ですが、では、名詞の「やば」とは何のことでしょうか。今回は、「やばい」がどのようにして生まれ、現在ではどのように使われいるのかをたどってみたいと思います。

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「やばい」の「やば」は牢屋(ろうや)のことだった

『新明解語源辞典(三省堂)』によると、「やば」とは牢屋(ろうや)の意味で、「やくば「厄場(やくば)」から転じたのではないかとされているようです。「厄場」自体は「牢屋」のことではなく、寄席や劇場で警官が監視する席のことですが、そこから転じて「やば」が牢屋の意味になったんですね。

「やばい」は、盗賊などが、悪事が見つかってしまう危険を察したときに、「危ない」という意味で用いられていました。ですから、もともとは盗賊の隠語だったものが、戦後のヤミ屋が横行した時代に一般の若者に広がったようです。そうすると一般化したのは昭和の前半から中盤になるでしょうか。比較的新しい言葉ですね。

「やばい」の意味の多様化

このように、昭和までは「危ない」や「まずい」という意味で用いられていたものが、だんだん変化して、現在では「すごい」や「魅力的だ」「すばらしい」という正反対の意味でも用いられるようになりました。もしも昔の盗賊が現代に転生したら困惑するかもしれませんね。

~昭和:危ない/まずい
平成~:+すごい/魅力的だ など

「やばい」の用例
・やばい。遅刻しそうだ。
・先生に見つかったらやばいよ。
・おいしすぎてやばい。
・やばい。当選しちゃった!
・やばっ、楽しすぎる。
・やっばー。

なぜ「やばい」はよい意味でも使われるのか

では、いったいなぜ「やばい」はよい意味で用いられるようになったのかを考察してみたいと思います。

心理学用語の「つり橋効果」はご存じでしょうか。ごく簡単にいえば、安定しているつり橋を渡った男女と、ぐらぐらしているつり橋を渡った男女とでは、ぐらぐらしているつり橋を渡った男女のほうが、渡ったあとに相手に魅力を感じていたことがわかったそうです。

これは、橋を渡るドキドキと恋愛感情のドキドキが似ているため、心拍数の上昇を相手への好意と勘違いした可能性があるためだと考えられます。

だとすると、「やばい!」という危険を察知した心臓の高鳴りが、だんだん魅力的なものに対するわくわく感に置き換わったとしても不思議ではありません。

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新しいイ形容詞たち

日本語は「イ」で終わる形容詞がとても多く、「やばい」のほかに、「赤い」や「青い」もそうですし、「難しい」や「易しい」などもそうですね。

そのため、最近では「ウザい」や「キモい」のように新しい形容詞がどんどん生まれていますし、「グロい」や、「エモい」のように英語と組み合わせた語もたくさんあります。

ちなみに、2025年の「今年の新語(三省堂主催)」では「しゃばい」が4位にランクインしています。「しゃばい」は「さえない/何の変哲もない/つまらない」という意味だそうです。「しゃば」とは「娑婆」、つまり一刑務所や軍隊の中から見た外の一般社会のことですから、変化に乏しく平凡だからでしょうか。

しゃばい=さえない/何の変哲もない/つまらない

造語の「イ形容詞」
「ウザい」=うざったいの略
「キモい」=気持ち悪いの略
「ムズい」=難しいの略
「しょぼい」=「しょぼしょぼ」+「い」
「ちゃらい」=「ちゃらちゃら」+「い」
「グロい」=「グロテスク」+「い」
「エモい」=「エモーション」+「い」
「しゃばい」=「娑婆」+「い」

おわりに

「やばい」がよい意味で用いられるようになったのと対照的なのが「おとなしい」です。これは「大人」に「しい」が付いて形容詞になったものですね。

おとなしい=「大人」+「しい」

もともとは「大人びていて分別がある」とか「年長者らしく落ち着いている」という意味だったものが、だんだんと「温和である」とか「従順である」という意味になり、今ではどちらかというと「消極的である」とか「扱いやすい」といったニュアンスでも用いられるようになりました。

このように、時代が求めるものが変化すると言葉の意味も変わっていくのかもしれませんね。最後まで読んでくださってありがとうございました!

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