はじめに
「とりあつかい」というときに「取り扱い」「取扱い」「取扱」の3種類の表記を見かけることがありますよね。学校で習った送りがなの付け方ではないものが堂々と使われていることにちょっとモヤッとしませんか? でも、実はこれらはみんな正規のルールにのっとった表記なんです。
ただし、公用文と新聞などのマスコミ表記とでは基準が異なっていて、新聞やNHKでは「取扱い」というように真ん中の送りがなを省く形は用いません。ですので、どちらがよいかはお立場や内容によって判断してください。
【取り扱い】○公用文 議事録 新聞 NHK
【取扱い】○公用文 議事録
【取扱い】×新聞 NHK
【取扱(限定的)】○公用文 議事録 新聞 NHK
では、具体的にどのように定められているのでしょうか。今回は「取り扱い/取扱い/取扱」の使い分けについてまとめてみたいと思います。
文化庁で示す「送り仮名の付け方」について
文化庁では送り仮名の付け方についてルールを定めています。
送りがなを省略するのは、主に「複合語」の場合です。「複合語」とは2語以上が結合して一語としての意味を持つようになったものののことですね。
例えば、前述した「取扱い」のほかに、「打合せ」や「売上げ」がそうですし、ほかには、「代表取締役」や「取扱説明書」など、送りがなを一切用いないものもあります。
では、具体的にどのように定められているかを見ていくことにしましょう。
中の送りがなを省くのはどんな場合?
文化庁の示す指針では、複合語のうち「読み間違えるおそれがない場合には送りがなを省くことができる」としています。その中に「取り扱い」も入っていて、「取扱い」とも「取扱」とも書くことができると示されているんですね。
ほかに使用頻度が高いものといえば、「売り上げ」「乗り換え」「申し込み」でしょうか。「売り上げ」は「売上げ」とも「売上」とも書けますし、「乗り換え」は「乗換え」でも「乗換」でも大丈夫です。
ほかにたくさんありますが、今回は特に以下の4語を取り上げたいと思います。
(送りがなを省くことができる例)
・取り扱い/取扱い/取扱
・売り上げ/売上げ/売上
・乗り換え/乗換え/乗換
・申し込み/申込み/申込
送りがなの一部を省くのはどんな場合?
「取扱い」のように、「取り扱い」の「り」だけ抜くのはどのような場合かというと、「取る」+「扱う」=「取扱い」というように、動詞がドッキングして名詞を形成しているような場合ですね。このような場合には最初の動詞の送りがなを省きます。
必ず「名詞形」でのみ用いますので、「取扱います」のように使うことはありません。
「取扱い」=「取る」+「扱う」
「取消し」=「取る」+「消す」
「取調べ」=「取る」+「調べる」
「取決め」-「取る」+「決める」
送りがなを全部省くのはどんな場合?
「代表取締役」や「取扱説明書」などのように、送りがな用いない表記もあります。これは公用文だけではなく、新聞もNHKも議事録も共通した使い方です。
なぜ省くのかというと、「慣用が固定している」ためです。「慣用」というのは、習慣として、長い間、世間で使われているもののことで、送りがなを省略する形がすっかり定着しているものは、それを踏襲することになっているんですね。
ほとんどが名詞形で、多くはほかの語と合体している場合に用いますが、「売上」は経済用語として用いる場合は漢字にします。
・取扱注意
・取扱説明書
・取扱金融機関
・売上高
・売上予定額
・売上総利益
・乗換駅
・乗換券
・乗換口
・申込書
・申込窓口
・申込受付期日
新聞マスコミにおける送りがなの扱い
注意したいのは、複合語の送りがなは「省くことができる」ということであって、「必ず省く」ということではありません。実際、これは公用文における方針であって、公文書独特の表記ともいえます。
では、新聞やNHKなどのマスコミではどうしているのかというと、「取扱い」や「売上げ」「申込み」などの中抜きの省略形は使用していません。また、学校教育においても用いていない形です。
もちろん、公文書以外では用いてはいけないわけではありませんので、業務上の文書や組織内の規程などでは「取扱い」や「売上げ」「申込み」を用いてもよいかもしれません。これについては組織内で方針を決定してください。
そうではなく一般の文章、つまり、情報発信のための記述であれば、新聞やNHKのように省略しない形のほうがふさわしいことになります。
(公用文/議事録)
・部品の取扱いについて説明します。
・薬品の取扱いについて定めます。
(新聞/NHK)
・部品の取り扱いについて説明します。
・薬品の取り扱いについて定めます。
「取り扱い/取扱い/取扱」の使い方まとめ
最後に、ここまでの内容を復習しておきたいと思います。
公用文や議事録においては、「取り扱い」「取扱い」「取扱」、いずれの表記も用いることができます。このうち「取扱」は、「取扱注意」のように複数の語が合体した語にのみ用います。
新聞やNHKなどのマスコミ表記においては、「取扱い」というように中に挟んである送りがなを省略する形は用いません。「取り扱い」か「取扱」のどちらかになります。また、「取扱」は、公用文と同様に、複数の語が合体した場合に限って用います。
今回は「取り扱い/取扱い/取扱」の使い分けのポイントをまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました!


