「よい」と「良い」と「善い」の使い分けを確認しましょう

花かごを持つカバのイラスト 表記の決まりごと

「よい」「良い」「善い」、どれにすればいいの?

「よい」というときに、「良い」にするのか、「善い」にするのか、それとも「よい」のままでいいのか、迷ったことはありませんか? なんとなく使い分けていますが、使い分けのルールが頭に入っていれば、次からは同じことで迷わなくてすみますので、今回は「よい」と「良い」と「善い」の使い分けについて探っていきたいと思います。

「よい」は、話し言葉だと「いい」になることが多い

「よい」の前に、まず、「いい」について触れておきたいと思います。

私たちが気軽に使っている「いいね!」もそうですが、口語では「よい」ではなく「いい」になることがとても多いですよね。「いい」はそのままひらがなで書いて、漢字にはしません。「良いね!」とは書かないということですね。

・いい感じ
・いい色合い
・いい雰囲気

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「よい」とひらがなで書く場合(補助形容詞)

「よい」と必ずひらがなにするものに、補助形容詞としての「よい」があります。補助形容詞の「よい」は「~てよい」「~てもよい」の形で用いられ、許可や承認を示します。「いい」になることも多いですが、いずれにしてもひらがなで表記します。

食べてよい  / 食べていい
走ってよい  / 走っていい
寝てもよい  / 寝てもいい
座ってもよい / 座ってもいい

確かに「よい」ってあんまり使わない。ほとんど「いい」って言っちゃう。

「好い」や「佳い」の意味の場合はひらがなにする

「よい」という漢字は「良い」や「善い」のほかに「好い」「佳い」などがありますが、常用漢字表の中で「よい」と読むように示してあるのは「良い」と「善い」だけですので、「好い」や「佳い」の意味の場合はすべて「よい」とひらがなで書きます。

良い(→良い):すぐれている 悪いの反対(一般語)
善い(→善い):道徳的にかなっている
好い(→よい):好ましい ふさわしい(など)
佳い(→よい):美しい おめでたい (など)


ひらがなで表記する用例としてはのようなものがあります。

・よいところに来てくれました。
・よい景色を眺めながらの食事は最高です。
・このよき日に卒業証書を手にすることができました。

なるほど。「よき日」は「佳き日」ってことなんだね。

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「善い」と漢字で書く場合

「善い」というのは限定的な表現で、道徳的な意味でしか用いません。熟語であれば「善行」「善悪」「善処」「次善策」などと用いますが、和語として「善い」というのはあまり出番がありませんよね。ただ、常用漢字ですので、「善いことをした人を表彰しましょう」などというのは漢字で書きます。

・彼の善い行いをたたえましょう。
・世の中のために善いことをしたい。

「善人」という表現がありますので「善い人」と書けなくはないですが、特別に徳を積んだ人でなければ「いい人」や「よい人」のほうが適切です。「善い」は、道徳性や倫理性を強調したい場合に用います。

「良い」と漢字で書く場合

「良い」と漢字で書くのは「優良」や「優秀」の意味の場合ですね。「すぐれている」というときには「良い」を用います。また、「悪い」の反対語としての意味を持たせたい場合も「良い」と書きます。

・成績が良い / 成績が悪い
・品質が良い / 品質が悪い
・手際が良い / 手際が悪い

書き手に判断が委ねられるもの

ここまで「よい」「良い」「善い」の書き分けについて述べてきましたが、解釈が分かれるものもあるんですね。例えば次のようなものです。

・よい気分になった。
・感じがよい娘さんだね。
・よい人間関係を築く。
・体によい野菜を食べる。

ちなみに、公用文や新聞表記では「気分が良い」「感じが良い」と表記するようにしていますが、議事録表記やNHKの表記では「気分がよい」「感じがよい」を優先して用いるようになっています。

つまり、「気分が悪い」に対しての「良い」なのか、「気分が好ましい状態である」という意味なのかで解釈が異なってくるんですね。「良好」というぐらいですからどちらも可能ですが、内容にもよりますので、「悪くない/すぐれている」ことを強調する場合は「良い」、「好ましい」ことを伝えたければ「よい」がふさわしいのではないかと思います。

このようなことを前提に、内容に沿った表記を工夫してみてくださいね。