「虫の知らせ」とはどんな意味?|理由がわからないものを「虫」のせいにした歴史的背景

なりきり知識人

「虫の知らせ」とはどんな意味?

「虫の知らせ」を感じたことがある人はいらっしゃいますか? 「虫の知らせ」とは、根拠はないけれども、なんとなく悪い予感がすることですよね。確かに、どことなく不吉な感じを抱いたり、いつもと違うと感じたりすることがあるものです。

虫の知らせ:なんとなく不吉に思うこと

では、その虫はどこからやってくるのかというと、自分の体の中の虫が知らせてくれていると考えられていたんですね。古くから、日本では、人間の体にはたくさんの虫がすみついていて、その虫が病気を引き起こしたり感情を左右したりするとされてきました。

「三尸(さんし)の虫」とはどんな虫?

「虫の知らせ」に深く関わっているのが、道教の「三尸(さんし)の虫」という伝説です。道教では、人間の体の中には3匹の不思議な虫が住んでいると信じられていました。その虫の名前が「三尸(さんし)の虫」です。

頭にいる上尸(じょうし)は、目をかすませたりシワを増やしたり、ぜいたくしたい欲をそそります。おなかにいる中尸(ちゅうし)は、食べ過ぎを誘ったり、イライラさせて怒らせたりします。足にいる下尸(げし)は、だらだらと怠けさせたり煩悩を呼び起こしたりします。

この3匹の虫たちは、早く人間に死んでほしいので、「庚申の日」の夜、寝ている人間の体から抜け出して、天の神様にその人の悪事を告げ口に行きます。それを聞いた神様は「けしからん。そいつの寿命を縮めてしまおう」ということになるんですね。

寿命を削られたらたまりませんから、人間は対抗策を編み出しました。それが「庚申待ち(こうしんまち)」です。「庚申待ち」とは、人々が一晩中寝ないで食べたり飲んだり、どんちゃん騒ぎをすることです。こうしていれば虫に体を抜け出す隙を与えません。

こうして人々は、体の中の虫と知恵比べをしながら寿命を守ろうとしたんですね。人間たちが「虫の知らせ」にとりわけ敏感なのも、そういう背景があるのかもしれません。

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平安時代の驚きの身体観

人間の体の中に虫がいるという考え方は、日本の源信というお坊さんが書いた『往生要集』にも出てきます。

『往生要集』によると、赤ちゃんが生まれて7日たつと、体じゅうの8万の穴から虫が湧いて、肉体を食い荒らし始めるのだそうです。そして、このようなたくさんの虫のせいで、体が病気になったり心が憂鬱になったりすると考えられてきました。

また、宿った人間の死期が迫ってくると、食べるものがなくなることを察した虫たちは互いを食いあって、最後にはウジ虫だけが残るとされています。

なかなかダイナミックな解釈ですが、とはいえ、現代においては、体の中に無数の微生物がすみついていることが明らかになっていますよね。昔の人は、目に見えないミクロの存在を、感覚的に「虫」として捉えていたのかもしれません。

「虫唾(むしず)が走る」とはどんな意味?

ひどく忌み嫌うことを「虫唾が走る」といいますよね。これは「吐き気がするほど不愉快だ」という意味です。

虫唾が走る:吐き気がするほど不愉快だ

虫唾とは「虫の唾(つば)」と書きますが、胃もたれして胃液が逆流してくる、あの酸っぱい液は「虫の唾」だと考えられていたんです。つまり、むかむかして気分が悪くなると、「オレの体の中の虫が唾液を出してやがるな」と思ったのでしょう。

このように、もともとは、いわゆる逆流性食道炎のような症状のことを指していましたが、近代からはそれが転じて、「虫唾が走る」が「吐き気がするほど不愉快だ」という意味で用いられるようになりました。

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「虫」が関係する慣用句を確認しよう

このように、人間と虫は切っても切れない関係にあったようで、たくさんの「虫」の慣用句があります。どれも根拠をはっきり示せないので「虫のせい」になったんですね。代表的なものを確認しておくことにしましょう。

虫がいい:自分勝手でずうずうしい
虫が好かない:なんとなく好感が持てない
腹の虫がおさまらない:怒りがおさまらない
虫を起こす:子どもがかんしゃくを起こす
虫の居どころが悪い:イライラして機嫌が悪い
虫の息:今にも死にそうな弱々しい呼吸
虫を殺す:腹が立つのをじっと我慢すること

一つのことに集中する「虫」とは

「虫」は悪いことばかりではなく、何か一つのことに集中している人を形容する場合に「本の虫」や「勉強の虫」などと用います。「虫」はあれもこれもすることは苦手で、これと決めたらそればかりやるからでしょうかね。

本の虫/勉強の虫/芸の虫/研究の虫 など

まとめ

「虫の知らせ」を信じるも信じないも自由ですし、何でも「虫」にするのは非科学的でもありますが、それでもどこか納得してしまうのは、まだまだ科学的に説明がつかないことが多いためではないでしょうか。それを「虫」のせいにするというのも、なんだかふんわりして楽しい解釈だと思います。

今回は「虫の知らせ」と「虫唾が走る」、そして、人間と虫との関係についてまとめてみました。最後まで読んでいただきありがとうございました☆

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