「事」と「こと」の使い分け|「私事」と「私ごと」はどう違う? 公用文や新聞表記のルールを丁寧に

表記の決まりごと

はじめに

「事」は、音読みの「ジ」なら迷いがありませんが、訓読みで「こと」という場合には、漢字で「事」にするものと、ひらがなで「こと」にするものとに分かれるんですね。この基準は公用文でも新聞やNHKでも共通した使い方ですのでご紹介したいと思います。表記を選ぶ際の参考にしてください。

まず、例外的に用いられるものにさっと触れておきたいと思います。

○私こと、このたび結婚いたしました。

「私こと、このたび結婚いたしました」の「私こと」は「私について言えば」という意味ですが、この場合はひらがなにします。よく、異動の挨拶文などに「私こと このたび本社勤務を命じられ」などと書いてありますよね。「経営の神様こと松下幸之助さん」の「こと」も同様の意味を持ちます。

「私こと」ではなく「私儀(わたくしぎ)」を用いることもあります。「儀」は「様」や「殿」と同じく人物に用いる接尾語ですが、自分を謙遜する場合に「儀」を用いるんですね。「私こと」も「私儀」も決まった言い方として覚えてしまったほうがよさそうですね。

さて、お待たせしました。本題に入っていきましょう!

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実質名詞の「事」は漢字にします

まず、漢字で「事」にする場合を確認しておきましょう。漢字のほうが限定的ですので、先に覚えてしまったほうが早いですね。

漢字を用いるのは、「物事」や「行為」「事件」など、「事象そのもの」の意味の場合です。つまり、実質名詞としての「事」ですね。「事」が単独で用いられることもありますし、「○○事」のようにほかの語と合体して名詞になる場合もあります。

用例で確かめてみてください。

・事の重大さ
・事に当たる
・事のついでに
・事もなげに
・事なかれ主義
・事と次第によっては
・事もあろうに
・事欠く
・事細かに

・悩み事
・習い事
・争い事
・願い事
・出来事
・見事
・物事
 など

形式名詞の「こと」はひらがなで書きます

ひらがなにするのは形式名詞の場合です。形式名詞というのは、前の語を名詞にしたり意味を添えたりする役割にとどまっている場合です。形式名詞は脇役ですのでひらがなにするんですね。

形式名詞の「こと」は実にさまざまな意味で用いられます。代表的な用例を挙げておきますが、ほかにもたくさんあります。ほとんどひらがなでよいのではないかと思うほどですが、念のため用例に目を通してみてください。

抽象的な事柄
・そういうことだ
・あんなこともあった
・どうでもいいことだ
・つらいことだったろう

前の語を名詞化する
・書くことができる
・読むことが好きだ
・食べることが好きだ
・泳ぐことが趣味です。

可能な条件を示す
・見ることができる
・入ることができる
・触れることができる
・書くことができる

命令や禁止を示す
・黙って持ち出さないこと
・人のものを食べないこと
・遅刻しないこと
・大声を出さないこと

経験があることを示す
・聞いたことがある
・行ったことがある
・読んだことがある
・見たことがある

可能性を示す
・断ることもある
・中止することもある
・発言することもある
・怒ることもある
 などなど

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実質名詞でもひらがなにするものがあります

本来であれば漢字で書くべきであるけれども、あえてひらがなにするものがありますので、ついでに触れておきたいと思います。なぜひらがなにするかというと、主に誤読を防ぐためです。

大ごと:大事だと「だいじ」と読めてしまうため
人ごと(ひとごと):人事は「じんじ」と読めてしまうため
もめごと:前の語がひらがななので続けてひらがなにする
まねごと:前の語がひらがななので続けてひらがなにする

「人ごと」は「ひとごと」とも書きます。この場合の「ひと」は「他人」という意味になるので、「人」と区別して「ひと」とする考え方です。「人ごと」でも「ひとごと」でも、書き手の判断でどちらを用いても大丈夫です。

「わたくしごと(私事)」はどう書けばいいの?

「わたくしごとで恐縮ですが、このたび結婚いたしました」などの「わたくしごと」は、公用文のルールとしては「私事」でいいのですが、そうすると「シジ」とも読めてしまいますよね。そのため、公用文以外では「私ごと」にします。また、「私」は「わたし」とも読めてしまうため、「わたくしごと」と書くこともあります。「私事」でも「私ごと」でも「わたくしごと」でも、語感に合うものを選んでください。

・私事で恐縮ですが、このたび結婚しました。
・私ごとで恐縮ですが、このたび結婚しました。
・わたくしごとで恐縮ですが、このたび結婚しました。

まとめ

・実質名詞の「事」は漢字にします
・形式名詞の「こと」はひらがなで書きます
・実質名詞でも誤読を防ぐためにひらがなにするものがあります。

今回は漢字の「事」とひらがなの「こと」の使い分けについてまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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