「はなむけ」は「花向け」ではなく「鼻向け」だった|新たな門出に贈る「はなむけ」の意味と由来

表記の決まりごと

「はなむけ」は馬の鼻を向けることだった

「はなむけ」とは、旅立ちや門出を祝って金品やメッセージなどを贈ることですね。「卒業生にはなむけの言葉を贈る」などと用います。

学校を卒業したり、職場が異動になったり、あるいは新しい挑戦のために住み慣れた土地を離れる人へ贈るのが「はなむけ」です。

「はなむけ」というと「花向け」かなと思ってしまいますが、もともとは「馬の鼻を向けること」なので「鼻向け」だったんです。

ちょっと驚いてしまいますが、今回は、そもそも「はなむけ」とはどういうことなのか、どういう場面で使われてたのかをまとめてみたいと思います。

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なぜ馬の鼻を旅立つ方向に向けたの?

かつて、主な移動手段が馬だった時代は、道中の安全を祈って、旅立つ人が乗る馬の鼻を、見送る人が行き先の方角へ向ける習慣がありました。これを「馬の鼻向け(うまのはなむけ)」といいます。

今のように交通網も整備されいませんし、地図といってもイラストのようなものでしたから、行きたい方向に向かって進むことが唯一の道しるべだったんですね。

遠方への旅はまさに命懸けだった時代に、馬の鼻を目的地に向けるという行為には、「方角を間違えたりしないで、迷わず無事にたどり着いてほしい」という切実なまでの願いが込められていたようです。

漢字の「餞」と「贐」の意味

「はなむけ」は、漢字では「餞」や「贐」になりますが、どちらも常用漢字ではないのでひらがなにします。それぞれ、どんな意味なのか見ていきたいと思います。

○「餞(はなむけ/せん)」

「餞」は「お餞別(おせんべつ)」でおなじみの漢字ですね。「食」が使われているように、もともとは旅立つ人のために用意したささやかな食事や、道中で食べるための保存食を指していました。

かつての人々は、旅立つ人を郊外まで追いかけ、そこで宴(うたげ)を開いて別れを惜しんだといいます。そのため、「餞」という字には「送別会」という意味も含まれるようになりました。

○「贐(はなむけ/じん)」

こちらは「貝へん」ですので、旅立つ人に贈る金品を意味します。旅の途中でトラブルに遭った際に何かと入り用になるのが金品ですよね。少しでも安心できるように持たせてくれたのでしょう。

このように「贐」は、「道中、何かあったら、これを使って窮地をしのいでくださいね」という励ましの品物だったと考えられます。

食べ物なら『餞』、お金や品物なら『贐』と漢字を使い分けていたことからも、当時の人々が手持ちの食料や財産を分け合いながら、旅人を励まそうとした心遣いが伝わってきます。

「お祝い」と「はなむけ」の違い

「はなむけ」はお祝いの席で用いられると勘違いしてしまいますが、正確には「別れの場面」で使われる言葉です。

卒業生に別れのことばを贈ったり、異動や退職で職場を去る同僚へ贈る金品などは「はなむけ」になります。

結婚式などは「お祝い」です。結婚を新たな旅立ちと考えれば「はなむけ」にしてもよいのかもしれませんが、おめでたい席なので、別れの意味を含む「はなむけ」は使わないほうが無難かもしれませんね。

また、「はなむけ」は目上の人から目下の人へ、あるいは対等な立場の人に対して使われるのが一般的ですので、目上の方を見送る場合は「はなむけ」や「お餞別」は使わずに、「御礼」や「ご祝儀」、あるいは「新天地でのご活躍をお祈りいたします」といった言葉に添えて贈るのがマナーなのだそうです。

現代に通じる「はなむけ」

現代では馬の鼻を向けることはありませんが、もちろん「はなむけ」を贈る精神は今も続いています。

進学や就職で地元を離れる際に、新しい生活を想像して選んだ実用的な品物を贈ったり、生活の足しにといくらかのお餞別を贈ることは、まさに「はなむけ」といえますね。

大切な人の安全を馬に託した時代から今に至るまで、大切な人を見送る気持ちはずっと変わらないのだと思います。

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