はじめに
「こども」というときに、「子供」にするか「子ども」にするか迷いますよね。実はこれはとても難しい問題で、かねてから論じられてきました。
実のところ、文部科学省では、かなり前に「省内では“子供”を使うように」という通達を出しているんですが、お膝元の教育の現場では、ほとんど「子ども」が使われているんですね。ただ、どちらにも、それぞれちゃんとした理由があって、統一するのはなかなか難しいようです。
そうはいっても、表記を選ぶには根拠が必要です。そこで、この記事では、公用文、新聞表記、議事録表記、NHK表記では、それぞれ「こども」をどのように表記しているのか、また、なぜ教育の現場では「子ども」が好まれるのか、そして、文部科学省ではどういう意図で通達を出したのかについてまとめてみたいと思います。表記を選ぶ際の参考にしてみてくださいね。
表題や政策名の「こども」について
まず、前提としてですが、タイトルやキャッチフレーズなど、表題として用いるのであれば、どれを使っても問題ありません。この記事で触れるのは本文中で用いる表記です。
実際、5月5日は「こどもの日」ですし、認定こども園も「こども」です。それに、イベント名やバンド名として、あえて「コドモ」とカタカナ表記が用いられていたりします。もちろんそれは自由ですから、ここでは除外したいと思います。
ただ、同じ国の行政機関でありながら、「こども家庭庁」では「こども基本法」を定めたり「こどもまんなか社会」をうたっていて、文科省とは方針が異なっています。このあたりも「こども」の表記が一定しない一因ではないかと思います。
政策の名前に「こども」が用いられていると、どうしても本文中で「こども」が多用されることになります。そうすると、地の文章の中の「子供/子ども」と、固有名詞の「こども」が混在することになり、悩ましいですよね。
そうすると、かぎ括弧を利用することになりますが、なぜ「こども家庭庁」と「こども」を採用したのかなど、私には不明確な点がありますので、これについてはここでは触れません。ご了承ください。
表記辞書で「こども」を調べてみました
まず、公用文、新聞、NHK、議事録はどのような立場なのか、それぞれの表記辞書で「こども」を調べてみました。
・公用文は「子供」を用います。
・新聞表記は「子供」と「子ども」の両方を使い分けます。
・NHK表記は「子ども」を優先する立場です。
・議事録表記は「子供」にします。
公用文:子供
新 聞:子供・子ども[注]一般には「子ども」が多く使われている。
NHK:①子ども ②子供 (5月5日は「こどもの日」)
議事録:子供たち 子供だまし[注]こどもの日 認定こども園 こども・子育て支援法
(引用元)
『最新公用文用字用例集(増補版)』(ぎょうせい公用文研究会編)
『新聞用字用語集(記者ハンドブック)』(共同通信社)
『NHK漢字表記辞典』(NHK放送文化研究所編)
『新訂 標準用字用例辞典』(公益社団法人日本速記協会)
このように、表記が統一されていないことがわかりましたので、ご自身で選んで大丈夫ということになりますね。
教育現場で「子ども」が好まれる理由
通達が発出されて以降、文科省関連の文書はすべて「子供」に置き換わりましたが、現在でも教育の現場では「子ども」の表記が多く使われ続けているようです。もちろん、自治体や教育機関によって扱いが異なるでしょうが、「子ども」が好まれるのには理由があるんですね。
教育の現場で「子ども」が好まれるのは、「子供」の「供」は「お供」の「供」なので、大人の添え物のようなイメージを想起させ、子どもを尊重する場にはふさわしくないという考えがあるようです。
また、小学校における漢字習得の学年との関連も見逃せません。「子」は小学1年生、「供」は小学6年生で習うことから、どうしても交ぜ書きになります。そのため、「子ども」という表記が定着してしまった側面もあるようです。
文部科学省からの通達の内容をざっくりと
前述したように、文部科学省では、2013年(平成25年)に、省内では「子供」に表記を統一するように通達を出しています。当時は「こども家庭庁」ができたばかりでしたので、私は少しちぐはぐな感じがしたことを思い出します。もちろん「こども家庭庁」は内閣府の所管ですから、文科省の通達の範囲外ですが。
どうしてわざわざそのような通達を出したのかというと、「子ども」と書くと文科省で出している表記のルールから外れてしまうためだと考えられます。
国語審議会では、基本的に接尾語はひらがなにするように定めています。接尾語の「ども」は「私ども」や「者ども」の「ども」ですね。
(「ども」は人が複数であることを示す接尾語)
・私ども
・者ども
でも、「子供」の場合は、1人でも子供ですので、「供」は複数を表す接尾語ではありません。それなのに「子ども」としてしまうと、「ども」が接尾語の扱いになってしまうというわけです。
これは「友達」の「達」も同じです。「達」はもともとは複数を示す接尾語でしたが、今では1人でも「友達」といいます。ですから、1人でも「友達」と書くのと同じように、1人でも「子供」と書いてほしいというのが文科省の意図なんですね。
(文科省通達の意図)
・子供(「供」は複数を表す接尾語ではないので漢字)
・友達(「達」は複数を表す接尾語ではないので漢字)
選び方のコツ(まとめに代えて)
どちらも、なるほどと納得しますが、そうなるとますます悩んでしまいます。組織に所属する方は方針を決定して統一して用いることになりますが、個人であれば文脈に応じて使ってみてください。例えば、「小人」の意味なら「子供」、特定の子どもを指していれば「子ども」にするといったように使い分けるのも一案ですね。
・子供料金
・子供用水着
・子供専用スペース
・先月、子どもが生まれました。
・子どもさんはおいくつですか?
・子どもたちの成長が楽しみです。
ただし、これは語感の違いもあるでしょうから、最初に示した新聞表記やNHK表記の例を参考に、ふさわしいと思う表記をご自身で選んでみてくださいね。
今回は「こども/子ども/子供」の使い分けについてまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました!


