はじめに:解釈がまちまちな「いれる」
「コーヒーをいれましょうか?」とか「お茶をいれてください」などの「いれる」はどう書けばいいのでしょうか。「いれる/入れる/淹れる」の3つの表記を見かけますが、どれが正解なのか迷いますよね。
もちろん、湯飲み茶わんの中にお茶を注いだり、マグカップをコーヒーで満たしたりする場合は「入れる」ですが、そうではなく、そのままでは飲めない状態のものにお湯などを注ぐなどして飲み物を作るという場合の「いれる」です。
実のところ、これは採用している表記が国語辞典でも異なりますし、表記辞書でも扱いが異なるんです。ですから、結論としては「いれる/入れる/淹れる」のどれを用いてもよいことになりますが、使い方には少し留意点があります。
では、具体的にどのように示されているのか見ていくことにしたいと思います。
国語辞典ごとの「入れる/淹れる」の扱い
国語辞典で調べたところ、「入れる」なのか「淹れる」なのかは一定していませんでした。
「入れる」そのものに「湯をさして飲み物を作る」という意味があるとするものや、「入れる」にするけれども「淹れる」とも書くという中立の立場のもの、「入れる」と「淹れる」は異なる動作として扱うものとがありました。
(検証結果)
「入れる」と書く
『岩波国語辞典(第八版)』
「入れる」だが、「淹れる」とも書く
『明鏡国語辞典(第三版)』
『新明解国語辞典(第八版)』
「淹れる」と書く
『三省堂国語辞典(第八版)』
『現代国語例解辞典(第五版)』
国語辞典を網羅しているわけではありませんが、このように解釈が分れているということをまずお伝えしたいと思います。
「淹」は常用漢字ではありません
ただ、注意しなければならないのは、「淹れる」の「淹」は常用漢字ではないということです。そのため、ひらがなで「いれる」にするのが原則ですが、もしも「淹」用いる場合には、初出にルビか読みがなを添えます。最初に読み方を示せば、2回目以降は必要ありません。
これが一応の表記のルールですが、このことを前提にして、表記辞書ではどのように扱っているのかを見ていくことにしたいと思います。
表記辞書による「入れる/淹れる」の扱い
表記辞書ではどうなっているのかというと、新聞表記と議事録表記では「入れる」を用い、NHK表記では「いれる」、つまり「淹れる」であるけれども、表外字なのでひらがなにするという立場です。
公用文の表記辞書ではお茶やコーヒーの用例を見つけられませんでしたが、議事録表記が「入れる」であることから「入れる」にするものと推察されます。
「入れる」と書く:新聞表記/議事録表記
「いれる」と書く:NHK表記
※参考文献『記者ハンドブック』『新訂 標準用字用例集』『NHK漢字表記辞典』
「淹」にはどんな意味があるの?
そもそも「淹」とはどのような意味があるのでしょうか。漢和辞典で調べてみたところ次のように「ひたす」や「ひたる」という意味でした。「湯を注いで飲み物を作る」というのは日本独自の使い方のようです。
(「淹」の漢字の意味)
『漢字源 改訂第六版)』おおう ひたす
『漢字海(第四版)』ひたす ひたる
結論:各自で判断してください
ここまで調べてきたように、解釈によってさまざまであるので、どれを用いてもよさそうです。
「入れる」で統一しても問題ありませんが、「入れ物に注ぐ」ことと「飲み物を作る」という意味を明確に区別したい場合は「いれる」とひらがなにします。
こだわりや雰囲気を伝えたい場合には「淹れる」を用いたくなるかもしれませんが、その際は、できるだけ初出に読みがなを添えてみてくださいね。
今回は、コーヒーやお茶の「いれる」はどう書くのがいいのかまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました!


