「活かす」は「生かす」? それとも「いかす」?

表記の決まりごと

「活(い)」かす」という読みは常用漢字表にはありません

「いかす」には複数の意味があって、「殺さないでおく」という意味はもちろん「生かす」ですが、「有効に活用する」「特性などを引き出して役立てる」という意味もありますよね。「活かす」という表記も見受けられますが、常用漢字表には「活」の読みは「カツ」しかありませんので、本来であれば「活かす」とは書けないんですね。

この場合の「いかす」の対応は公用文と新聞表記で異なっていて、現在のところ公用文では「いかす」とひらがなで書くようにしているのに対して、新聞表記では「生かす」としています。どちらの表記も誤りではありませんので、立場によって使い分けてください。もちろん、「格好がいい」「しゃれている」という意味は、どの場合でも「いかす」とひらがなで書きます。

どっちでもいいと、逆に迷うな。

「活かす」と書きたい場合はルビやふりがなを添えます

「活かす」は表外字なので原則としては用いないほうがいいのでしょうが、ひらがなには意味がありませんので「活かす」と書きたい場合もありますよね。「この部材をいかしたい」などの場合は「この部材を活かしたい」にしたくなります。そういうときは初出の際に「活(い)かす」とルビやふりがなを添えて用います。ふりがななしでも読める漢字ではありますけれども、原則としてはそうなります。ルビやふりがなは文章や記事の初出だけで大丈夫ですよ。

※立場や方針、文脈によっていずれの表記も可能です。
・素材の特性をいかして新しい商品を開発しました。
・素材の特性を生かして新しい商品を開発しました。
・素材の特性を活(い)かして新しい商品を開発しました。

「いかす」を使って短文を作ってみましょう

「いかす」には複数の意味と表記があります。それぞれ短文を作って確かめましょう。

・何もせず生かしておかれるだけの人生はつらい。
・あなたの才能をこのプロジェクトでいかしてください。
(あなたの才能をこのプロジェクトで生かしてください。)
・その老紳士はいかした服を着ていました。

「いかす」がいいと思う理由

このように新聞表記と公用文とで表記が異なると、どちらも本則に従っているのに、ふだん用いていないほうの表記が間違いだと認識されかねません。私自身は「いかす」という表記を用いることが多いですが、逆に「生かす」になじんでいる方も多いのではないでしょうか。決められたルールで書く仕事をしている人以外であれば、こうしたルールから少し離れて自由に表記していいわけですし、そんなに窮屈に考えなくても大丈夫です。

ただ「活」の字は「ヒト」の場合には用いないような配慮は必要だと思います。「Aさんを活かして配置する」などですね。「Aさんの能力を活かして」であればで問題ないと思いますが、「人材活用」という用語に違和感があるのは私だけでしょうか。まるで、社会の中で役に立たなくなっている人を利用するようなイメージを抱いてしまうんです。

かといって、「Aさんを生かす」にすると「殺す」の反対の意味になりかねません。これもまた重大な問題です。ですから「いかす」が無難なんでね。もちろん「モノ」であればその心配はありませんから、臨機応変に用いていただきたいと思います。

「いかす」でもいいんだけど、ひらがなが続く場合は読みにくくなる難点はあるわね。