「卒業」と「修了」の違いを理解して使い分けましょう

知りたかったモヤモヤ語

「終業式」と「修了式」と「卒業式」の違いは?

学校では、入学式と卒業式のほかに、学期の区切りや学年の区切りに体育館に集合して儀式を行いますよね。念のため、その式典の名称を確認しておきましょう。

終業式:年度途中の学期の最後の日の式
修了式:年度最後の学年の終わりの日の式
卒業式:それぞれの学校での学びを終える日の式

1学期最後の日や2学期の最後の日に行うのは「終業式」です。前期・後期の2学期制を採用している学校は前期の終わりの日ですね。会社などで一日の業務を終えることも「終業」といいますが、「終業」とは、業〔やるべきこと〕を終えることです。

学年の最後の3月には「修了式」を行います。これは、在籍する学年の定められた課程をおさめ終えたことを確認するもので、修了式の日には「修了証書」が渡されますよね。修了証書はそのことの証明書で、通知表の裏側にくっついている学校が多いかもしれません。

そして、いよいよその学校での学びを終える3月には「卒業式」を迎えて、そこで卒業証書が授与されます。人数が多い学校は代表者に渡されますが、一人ずつ手渡す場合もあります。「卒」という漢字には「締めくくる」という意味があるようです。日本人にはなじみ深い卒業式ですが、卒業式をする文化があるのは世界でも珍しいらしいですよ。

学年の終わりは「終了式」ではなくて「修了式」なんだね。

大学は卒業するもの? 修了するもの?

大学はどうでしょうか。大学は4年間(医学部・歯学部・獣医学部・薬学部の一部は6年間)で一区切りです。これを学士課程といって、必要な単位を取得すれば無事に卒業して「学士」という学位を与えられます。大学は「卒業」なんですね。大学生を大学院生と区別するために「学部生」と呼ぶこともあります。

そのあと大学院に進学することもできます。大学院生は「学生」ではなく「院生」になります。大学院は、大学によって異なっていますが、多くは修士課程(または博士前期課程)を2年ほどで修了して「修士」の学位を授けられます。さらに進学すれば博士課程(または博士後期課程)となって、おおむね3年ほどかけて学び、最後に博士論文審査に通れば「博士」の学位が与えられます。ちなみに、大学院は卒業ではなく「修了」します。

「卒業」と「修了」の違いは?

国語辞典によれば、「卒業」というのは「定められた課程を学び終え、その学校を去ること」で、「修了」というのは「学業などの一定の課程をおさめること」とです。つまり、学校での学びを終えるのが「卒業」、一定の課程をおさめるのが「修了」ということなんですね。

卒 業:定められた課程を学び終え、その学校を去ること(明鏡国語辞典)
修 了:学業などの一定の課程をおさめること(明鏡国語辞典)

「学校」は「卒業」、それ以外は「修了」なんだね。

「学校」の種類にはどんなものがあるの?

学校を卒業するのが「卒業」だとすると、では、「学校」にはどんなものがあるのでしょうか。学校教育法では第一条で「幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」を学校と定めています。ですから、ここにある学校の場合は「卒業」、ないものは「修了」を用います。

【学校教育法 第一条】 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

大学院は学校ではないので「修了」ですね。高専(高等専門学校)以外の専門学校を含む専修学校も「修了」です。また、各所で開催される「○○講座」のたぐいも「修了」を使います。「修了」というのは、学校を出ましたというのではなく「学び終えました」ということなんですね。ちなみに、短期大学は大学に含まれます。

ここで「保育園がないじゃない?」と思われたかもしれませんが、保育園は文部科学省管轄ではなく厚生労働省管轄ですので「学校」には入っていません。こども園は保育園と幼稚園の両方の機能を持ったもので、管轄は内閣府ですから、これも学校には含めません。ただ、幼児の場合は「卒業」でも「修了」でもなく「卒園」を用いています。

プログラミング講座も、最後まで受講すれば「修了」になるわ。

「卒業証書授与式」と「学位記授与式」のこと

卒業式というのは学習指導要領に定められた特別活動のうちの儀式的行事のひとつですので、小中高では必ず挙行されます。卒業式のことを、卒業証書を授与する式典ということで「卒業証書授与式」と呼称したりもしますよね。

一方、多くの大学には大学院が設置されています。学部(大学)だけの大学や大学院だけの大学院大学もありますが、ほとんどの場合、大学と大学院は同じ建物で、誰が大学生(学部生)で、誰が院生なのか区別できません。どちらかだけならば「卒業式」もしくは「修了式」でもいいのかもしれませんが、同時に挙行するので、多くの大学が「学位記授与式」としています。学位記とは、学士、修士、博士、それぞれの学位を取得したことを証明するもので、いわば卒業証書のようなものです。

「卒業」するのは学校だけではなかった

「卒業」には「ある段階を体験して通り過ぎること」の意味もあります。卒業するのは学校だけではないんですね。確かに、私たちは日常的に「もう、おむつは卒業ね」とか、「もうマンガを買うのは卒業しようと思うんだ」のように使います。卒業には「サヨナラする」というニュアンスがあるんですね。

「卒業」という表現は、アイドルグループが使ったことで一気に広まったわね。

「卒業」を使って短文を作ってみましょう

「卒業」の2つの意味を考えて短文を作ってみてください。昨今は、学校ではないものを「卒業」する意味のほうが多く使われているかもしれませんね。

・この春、無事に中学校を卒業しました。
・何でも内向きに考えてしまう自分はもう卒業だ。
・甘いものはもう卒業して、あしたからダイエットしようっと。