はじめに
「ねらい/ねらう」というと「狙」という漢字を思い浮かべるかと思います。射的で景品を狙ったり、主役の座を狙ったりしますよね。ただ、ひらがなにしたほうがいい場合もあるんですね。それが「めあて」という意味の場合です。今回は、「狙う/狙い」と「ねらう/ねらい」の表記の使い分けについてまとめてみたいと思います。
「ねらう/ねらい」には大きく3つの意味があります
「ねらう」とは、「①目標のものを自分のものにしようとすること」「②目標に命中させようと構えること」、そして、「③ある事柄を目標として目指すこと」という3つの意味で用いられます。このうち、「③ある事柄を目標として目指すこと」という意味の場合にはひらがなを用います。
それぞれ、具体的な用例で確かめてみましょう。
①目標のものを自分のものにしようとすること(漢字)
・狙っていたチケットが手に入った。
・お買い得商品を狙って行列ができた。
・彼女は次の主役の座を狙っている。
②目標に命中させようと構えること(漢字)
・この枠内を狙って投げてください。
・弓道は弓で矢を飛ばして的を狙う武道です。
・決定的瞬間を狙ってカメラを準備します。
③ある事柄を目標として目指すこと(ひらがな)
・この企画のねらいは交流を深めることです。
・この商品は使いやすさをねらって開発しました。
・修学旅行のねらいをよく考えて行動してください。
なぜ「めあて」の意味の「ねらい」はひらがなにするのか
2024年に出された文化審議会の「公用文作成の考え方」において、「常用漢字表の字種・音訓を用いた語であっても、必要に応じて振り仮名等を用いたり仮名で書いたりするなどの工夫をする」ものの例として「狙い→ねらい」が示されています。
これまでも、特に教育の分野では「学習のねらい」や「単元のねらい」などと用いていましたし、文部科学省では「新しい学習指導要領のねらいの実現に向けて」などと使用してきましたので、特に目新しいことではないかもしれません。
漢字を用いても間違いということではありませんが、「めあて」や「目標」という意味は、本来の「狙」の漢字の持つ意味から離れてしまっていますので、ひらがなが好ましいのではないかと思います。
「ねらい」の標記方法「一つ書き」について
このように、ひらがなの「ねらい」は「めあて」のことですが、みんなの共通のめあてはきちんと書いて目の届くところに掲示したりしますよね。小中学校などではクラスの目標を黒板の上に掲げているところも多いのではないかと思います。
「めあて」は箇条書きにして覚えやすいようにしますが、大会宣言などでよく用いられるのは「一つ書き」という手法です。「一、」や「一つ、」で始まりますので「一つ書き」というんですね。項目がいくつあっても「一(ひとつ)」で始まります。会社の社訓や学校の校訓を「一つ書き」で定めているところもあるかもしれません。
「一つ書き」で有名なのはトヨタ自動車の「豊田綱領」ではないでしょうか。「豊田綱領」はトヨタグループの創始者である豊田佐吉の遺訓をまとめたものです。
豊田綱領(出展:TOYOTAホームページより)
一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし。
一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし。
一、華美を戒め、質実剛健たるべし。
一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし。
一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし。
また、かつて『八重の桜』という大河ドラマがありましたが、そこでは福島県の会津地方に伝わる「什(じゅう)の掟」が何度も登場していました。「什」とは数字の10のことではなくて、グループのことを「什」と呼んでいたそうですよ。
「什の掟」(出展:會津藩校日新館ホームページより)
一、年長者の言ふことに背いてはなりませぬ
一、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ
一、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
一、弱い者をいぢめてはなりませぬ
一、戸外で物を食べてはなりませぬ
一、戸外で婦人と言葉を交へてはなりませぬ
ならぬことはならぬものです
「一つ書き」は上意下達のようなニュアンスを含んでしまうことがありますので、最近はあまり用いられないのかもしれません。でも、内容を工夫して楽しいものにすることで、「一つ書き」という手法が残っていくといいなと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


