「通り」と「とおり」の使い分け:「そのとおり」はなぜ「その通り」ではないの?

表記の決まりごと

はじめに

「~のとおり」というのはよく用いられる表現ですよね。「そのとおり!」などと用います。これは「とおり」なのか「通り」なのか迷ったりしないでしょうか。実は、これは「公用文における漢字使用等について」という文書で「とおり」と書くように示されていて、これに新聞表記も議事録表記もNHK表記も従っているんですね。

「公用文における漢字使用等について」より抜粋
キ 次のような語句を,( )の中に示した例のように用いるときは,原則として,仮名で書く。
例)とおり(次のとおりである。)

ただ、ネットのニュース記事や民放のテレビ番組などを見ていると「通り」になっていることがとても多くて、こうやって書いて大丈夫なのか、かえって不安になるほどです。もちろん、表記に自由度がある場合はこだわらなくていいのかもしれませんが、ここでは原則をお伝えしていきますね。

また、「そのとおり」は「とおり」ですが、「どうりで○○だと思った」の場合は「どうり」と「う」にします。これも間違えやすいところですが、どうしてなのか理解しておくと混乱がなくなると思いますので、今回は、「通り」と「とおり」の使い分けと、なぜ「どうりで」は「う」なのかをまとめてみたいと思います。

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「とおり」とひらがなにするのは形式名詞だから

「冒頭で申し上げたとおりです」「田中さんの意見のとおりにしましょう」など、「とおり」はよく用いますが、これは、「そっくりそのまま同じこと」の意味です。この場合は「とおり」とひらがなにするのが原則です。

それはなぜかというと、漢字の「通」というのは、そもそも「道路の通り」とか「通過する」という意味ですよね。でも、「~のとおり」は「そっくりそのまま」のことですから、漢字の意味から離れてしまっています。これを形式名詞といいますが、形式名詞はひらがなにするのが基本なんですね。

「とおり」の用例
・あなたの言うとおりになったよ。
・練習のとおりにやれば絶対大丈夫だ。
・詳しい状況については資料のとおりです。
・例年どおりの内容で問題なさそうです。
・望みどおりの地位を与えましょう。

「言うとうり」じゃなくて「言うとおり」なんだね。

形式名詞ってどんなもの?

形式名詞といってもピンとこないかもしれませんが、例えば下のようなものが形式名詞になります。これらは本来の意味から離れてしまっているのでひらがなにするんですね。

形式名詞の例
・現在、状況を確認しているところです。(×所)
・遅刻したら棄権したものとみなします。(×物)
・ここで引き下がるわけにはいきません。(×訳)
・ご検討のほど、よろしくお願いします。(×程)
・昨年の事件はご承知のことと思います。(×事)

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「通り」と書くのはどんな場合?

もちろん「とおり」を「通り」と書く場合もあります。道路の往来や道路の名前のほか、何かが通過する場合です。また、「3通りの方法」など手段の場合も「通り」と漢字にします。

「通り」の用例
・通りを渡る際は十分に安全を確認してください。
・通りがけに懐かしい人に出会った。
・トンネルを通り抜けるとそこは青空だった。
・光がカーテンの隙間から通り、まぶしく感じた。
・3通りの選択肢から選んでください。

そのほかに「通り」には特定の言い回しもあります。

・通り名  (通称、通名)
・通り相場 (世間一般の評価や価値)
・通り言葉 (世間一般で通用する言葉)
・通り雨  (ひとしきり降ってすぐやむ雨)
・通りいっぺん (うわべだけで誠意がないこと)

「通して」や「通じて」は漢字で書きます

また、動詞の「通す」や「通じる」は漢字で書きますので、「通して」「通じて」も漢字になります。これは、「通過する」とか「通じている」というそのままなの意味なので漢字なんですね。「とおり」と混同しやすいので注意したいポイントです。

「通して/通じて」の用例
・外国を通して自国を知ることもある。(とおして)
・外国を通じて自国を知ることもある。(つうじて)

・会話を通して理解を深めましょう。(とおして)
・会話を通じて理解を深めましょう。(つうじて)

「どうりで~」は「どうり」と書きます

「どうりで~だと思った」という場合ですが、逆にこれは「どうりで」で、「どおりで」ではないことに注意してください。なぜかというと、漢字で書けば「道理で」になるためです。「道理」というのは「理由」や「論理」という意味で、「それでは道理が通らない」などと用いますが、副詞になるともともとの意味が薄れますので、「どうりで~」とひらがなで表記します。

・ごまかしてたの? どうりで計算が合わないはずだ。
・剣道二段の腕前ですか。どうりでお強いはずだ。
・3歳からピアノを習っていたなんて、どうりでお上手なわけです。
・お母さんは元女優さんなんだって? どうりできれいだと思ったよ。

やばっ! 今まで「どおりで」にしてた!

まとめ

・「そのとおり」など形式名詞の「とおり」はひらがなにします。
・「通り」を漢字で書くのは道路の往来や道路の名前、何かが通過する場合です。
・方法や手段が「3通りある」などの場合も漢字で「通り」にします。
・「どうりで~」は「道理で」のことなので「どうり」と書きます。

今回は「通り」と「とおり」の使い分けと、「どうりで」はなぜ「う」にするのかまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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