悩ましい「初め」と「始め」の使い分け
「初め」と「始め」の違いは感覚的に理解しているつもりでも、いざ使おうとすると迷うことが多いですよね。「年の初め」なのに「仕事始め」といったり、なんだか混乱してしまいます。
ただ、使い分けとしては、「最初」という意味なら「初」、「開始」という意味なら「始」を用いると覚えておくと便利です。「年の初め」は「最初」という意味なので「初め」ですが、「仕事始め」は仕事をスタートすることなので「始め」にします。「初めて」というのも「最初」という意味ですね。
初め:first(順番が「最初」)
始め:start(行動を「開始する」)
では、「~をはじめとした」というような場合にはどう書けばいいでしょうか。また、「はじめに」は「初めに」でしょうか、「始めに」でしょうか。
このような疑問を解決するために、今回は、「初め」と「始め」の使い分けについてまとめてみたいと思います。
「~(を)はじめ」はどう書けばいいの?
まず、「~はじめ」や「~をはじめとした」「~をはじめとする」という表現について確認してみましょう。
「校長先生はじめ諸先生方」や「社長をはじめとする役員一同」というように、おもだった人を代表として挙げる言い方の場合は「~はじめ」とひらがなにします。これは、新聞表記、議事録表記、NHK表記、いずれにおいてもそのように示しています。
・校長先生はじめ諸先生方に心から感謝いたします。
・社長をはじめとする役員一同が集まった。
・A君をはじめ、メンバー全員の努力のたまものです。
※ただし、公用文のみ「始め」を使うこととしていますので、「校長先生を始め」でも間違いではありません。語感に合うほうを用いてみてください。
「はじめに」は「初めに」なのか 「始めに」なのか
次に「初めに」なのか「始めに」なのかについて触れたいと思います。「はじめに」は、一般には「初めに」と書きます。「はじめに」といったら、その多くが「初めに」です。ただ、「始めに」のこともあるんです。
順番として「最初に」とか「1番目」という意味であれば「初めに」にします。「初っぱなに」ということですね。「初めに、市長からあいさつがあります」というように用います。進行上の1番目ですから、2番目、3番目と進行していきます。
一方、「手始めに」という意味なら「始めに」になります。『三省堂国語辞典』では「仕事の始めに予定を確認する」を用例として示しています。
どういうことかというと、予定を確認するという作業が仕事に含まれない場合には「始めに」になるんですね。これが「手始めに」という意味です。合唱の練習の前に発声練習をするという場合も、発声練習を合唱の練習に含めないなら「始めに」になります。
最初に → 初めに
手始めに → 始めに
書籍など、文章における前置きにあたる「はじめに」は、本文の最初の部分ではなく、独立した「前書き」のような役割なので「初めに」が使えないんですね。ただ、「始めに」という書き方はとても使いにくいですし、混乱を招くことから、書籍などでは「はじめに」とひらがなにしてあることが圧倒的に多いようです。
ですので、判断に迷ったら「はじめに」と、ひらがなも選択肢に入れてみてくださいね。
(初めに)
・初めに、市長からあいさつがあります。
・初めに自己紹介を行いたいと思います。
・初めに基礎的な問題に取りかかってください。
(始めに)
・仕事の始めに予定を確認する。
・合唱の始めに発声練習をしてみよう。
・実験の始めに器具をそろえてください。
「初め」は時間の上での「最初」を表します
ここからは、「初め」と「始め」の基本的な使い方についてまとめていきたいと思います。
「初め」は、物事における早い時期のことで、ほとんどの場合は「最初」と言い換えることができます。季節や時間を示す名詞と一緒に用いたり、時間軸における初めのうちを示します。
・月初め
・年度の初め
・7月の初め
・秋の初め
・初めは心配でした。
・初めに思っていたことと違います。
・初めは乗り気ではありませんでした。
・初めからやり直してください。
「初めて」は初回であることを示します
初回の経験や体験である場合には「初めて」になります。「first time」のようなことですね。
・初めて見る
・初めて食べる
・初めて経験した
・やってみて初めてわかった。
・指摘されて初めて気がついた。
動詞の「始める/始まる」は「開始する」ことです
動詞の「始める/始まる」は、ほとんど「開始する」という意味ですが、「起こり」という意味もあります。また、「泣いても始まらない」や「また始まった」のように決まった言い方をして、特別な意味を持たせることもあります。
(開始する)
・仕事を始める
・会議が始まる
・読み始める
・2学期が始まる
(起こり)
・あれがそもそもの始まりだった。
・この祭りは明治時代に始まる。
・歴史始まって以来の出来事だ。
(特別な意味)
・泣いても始まらない。
(=どうしようもない。)
・今に始まったことではない。
(=いつもそうである。)
・また始まった。
(=いつものくせが出た。)
名詞の「始め」も物事を開始することに用います
新しく物事を開始することを「○○始め」といいます。また、「始め!」というように開始の号令として用いられることがあります。
・稽古始め
・仕事始め
・事始め
・手始め
・歌会始
・講書始
・始め!(号令)
・始めよければすべて良し。
まとめ
・「先生をはじめ」の「はじめ」一般的にははひらがなにします。
・「はじめに」は、一般的には「初めに」と書きます。
・「初め」は時間の上での最初を表します
・「初めて」は初回であることを示します
・動詞の「始まる/始める」は開始することに用います。
・名詞の「始め」も物事を開始することに用います。
今回は「初め」と「始め」の使い分けについてまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました。


