はじめに:公用文や新聞の表記ルール
「なれる」というと「慣れる」という漢字を思い浮かべますが、ほかに「馴れる」や「狎れる」もありますし、「熟れる」の意味の「なれる」もあります。
漢字で書くのは「慣れる」だけ
でも、国が漢字使用の基準としている「常用漢字表」には「馴」や「狎」の漢字がありませんし、「熟」は「ジュク」と「うれる」の読みしかないんですね。つまり、「なれる」という読みがあるのは「慣れる」だけですので、「馴れる」や「狎れる」や「熟れる」はひらがなにするのが公用文や新聞のルールになっています。
実際、「馴れる」と「狎れる」の境界はあいまいですので、「慣れる」以外はひらがなにするのは合理的です。
そうすると、「慣れる」か「なれる」の2択なので簡単なように思ってしまいますが、確認の意味も込めて、今回は「なれる」の意味と使い方を確認していくことにしたいと思います。
[補足①]漢字で書きたい場合
もしも「慣れる」以外も漢字で書きたい場合には、初出に「馴(な)れる」「狎(な)れる」などと読みがなを添えるか、ルビを用いることが一応のルールになっています。この場合、2回目以降は必要ありません。
「なれる」にはどんな意味があるの?
「なれる」には大きく以下の意味があって、それぞれの漢字は括弧内に示すとおりとなります。前述したように、このうち③~⑥はひらがなで表記してくださいね。
ポイント 漢字にするかひらがなにするかを直感的に判断するには、「経験値」のことを扱っているなら「慣れる」で、「関係性」についてなら「なれる」と覚えるといいかもしれません。
①たびたび経験することで習慣になる。(慣れる)
②しょっちゅう経験したり使ったりしてなじむ。(慣れる)
③いつも接することで親しんでなつく。(馴れる→なれる)
④親しみすぎて礼を欠くようになる。(狎れる→なれる)
⑤ほどよく時間がたって味加減がよくなる。(熟れる→なれる)
漢字で「慣れる」と書く用例
①たびたび経験することで習慣になる。
(慣れる)
・先生に怒られるのも慣れっこだ。
・貧乏な生活にもすっかり慣れたよ。
・慣れた手つきで料理をする。
・新しい土地にどうにか慣れました。
・習うより慣れろ
②しょっちゅう経験したり使ったりしてなじむ。
(慣れる)
・使い慣れた万年筆を大事にします。
・履き慣れた靴で参加してください。
・着慣れた上着がとうとうだめになった。
・読み慣れた新聞がやっぱりいいね。
・住み慣れた土地を離れるのは寂しい。
ひらがなで書く「なれる」と書く用例
③いつも接することで親しんでなつく。
(馴れる→なれる)
・園児たちが新しい先生になれてきた。
・もらった猫がやっとなれてくれた。
・よくなれているイグアナだ。
・イルカって人になれるものなんだね。
④親しみすぎて礼を欠くようになる。
(狎れる→なれる)
・店になれて入り浸って迷惑だ。
・あいつ、なれていい気になってるな。
・なれてしまったら僕たちの関係は終わりだよ。
・寵愛(ちょうあい)になれて最近はふてぶてしい。
⑤ほどよく時間がたって味加減がよくなる。
(熟れる→なれる)
・1週間ほどしてなれてきたら食べ頃です。
・十分になれたみそだからおいしいよ。
・なれずしは独特の味わいです。
・ぬかみそがいい感じになれてきた。
「なれなれしい」はひらがなで書きます
特に親しい関係ではないのに、親密であるかのような態度を「なれなれしい」といいますよね。漢字で書けば「馴れ馴れしい」、もしくは「狎れ狎れしい」ですが、ひらがなで「なれなれしい」と書きます。
・なれなれしい態度が気に入らない。
・なれなれしい話し方はやめてくれ。
・知らない人からなれなれしく声をかけられた。
「なれそめ」はひらがなで書きます
カップルやご夫婦に対して、「なれそめは?」などと質問したりしますが、これを無理やり漢字にすれば「馴れ初め」になります。なれて親しくなる最初のきっかけのことですね。これは「なれそめ」という連語になっているので、そのままひらがなで表記します。
・お二人のなれそめを教えてください。
・なれそめは高校の部活動なんです。
まとめ
・たびたび経験することで習慣になることは「慣れる」と書きます。
・しょっちゅう経験したり使ったりしてなじむことは「慣れる」と書きます。
・親しんでなつくことは「馴れる」ですが、ひらがなで「なれる」にします。
・親しみすぎて礼を欠く場合は「狎れる」ですが、ひらがなで「なれる」にします。
・時間がたって味加減がよくなることは「熟れる」ですが、「なれる」にします。
今回は「なれる」の表記についてまとめてみました。最後まで読んでいただきありがとうございました。


