はじめに
「しょうしゅう」には「招集」と「召集」がありますが、「召集」を用いるのは「国会を召集する」場合だけで、ほかはみんな「招集」にします。
例外はないのかというと、ほかには「軍隊の召集」に用いますが、現在は軍隊はありませんので、歴史的な内容を記述する際にのみ「召集令状」などと限定的に用います。
これだけで「召集」と「招集」の使い分けは事済んでしまいますが、今回は、それがどうしてなのかに簡単に触れてみたいと思います。
「招集」と「召集」はどう違うの?
「招集」も「召集」も、どちらも人を集めることですが、「招集」は「招き集めること」で、「召集」は「召し集める」ことです。もともとの意味としては、「招集」は「手で招き寄せること」で、「召集」は「口で呼び寄せること」だそうです。
ただ、「召し集める」の「召す」というのは尊敬語ですから、「お呼び寄せになられる」という意味になりますので、当然、呼び寄せたのは高い地位の人です。つまり「召」には上から下への命令という意味が含まれてしまうんですね。
そうすると、命令に逆らえないような強制力を連想してしまいかねないことから、一般には「召集」ではなく「招集」にします。
どうして国会は「召集」を使うの?
どうして国会のみ「召集」にするかというと、それは「日本国憲法」との整合です。日本国憲法第七条で示されているように、天皇の国事行為のひとつに「国会の召集」があります。そのため、国会は「召集」を用いるんですね。
では、地方議会はどうでしょうか。「地方自治法」の第101条には「普通地方公共団体の議会は、普通地方公共団体の長がこれを招集する」とあって、ここでは「招集」を用いています。議会だけではありません。「会社法」においても、取締役会や株主総会は「招集」を用いています。
このようなことから、実質的に「召集」を用いるのは天皇の国事行為としての「国会の召集」のみになります。
「招集」は議会以外でも使えるの?
「召集」は「上級者が下級者を呼び集めること」ですので、リーダーがメンバーを呼び集めるような場合は「召集」にしても間違いではないのでしょうが、公用文においても、新聞表記においても、議事録表記やNHKの表記においても、「召集」は「国会の召集」と「召集令状」のような場合に限定して用いるように示しているんですね。
そのため、「招集」を会議以外のことに場合、つまり、「メンバーに招集をかけてくれ」とか、「全員を招集して対応するしかないな」という場合も「招集」を用いてくださいね。
・メンバーに招集をかけてくれ。
・全員を招集して対応するしかないな。
「神の思し召し」とはどういう意味?
「召す」というのは「呼び寄せる」とか「取り寄せる」を敬って言う表現ですが、ほかに、「食べる・着る・風邪をひく・気に入る・年を取る」など、さまざまな意味の丁寧な言い方にも用います。
・召し上がる(食べる)
・お召しになる(着る)
・風邪を召す(風邪をひく)
・お気に召す(気に入る)
・お年を召す(年を取る)
議会に呼び寄せられるのはいいとしても、場合によっては神様からお呼びがかかって「天国に召される」こともあります。それも「神の思し召し(おぼしめし)」ならしかたがないのかもしれません。
ところで、「神の思し召し」というのはどういう意味なのでしょうか。「思し召し」とは「お考え」や「お気持ち」を丁寧に言い表したものですので、「神の思し召し」とは「神様がお考えになられること」という意味になります。
・これも神の思し召しに違いない。
・神の思し召しとあらば受け入れよう。
まとめ
・「招集」は「招き集めること」、「召集」は「上級者が下級者を呼び集めること」である。
・「国会の召集」「軍隊の招集/召集令状」のみ「召集」を用い、そのほかは「招集」にする。
・「神の思し召し」とは「神様がお考えになられること」の意味である。
今回は「招集」と「召集」の使い分けについてまとめてみました。すでにご存じのことだったかもしれませんが、なにがしかお役に立てることがあれば幸いです。ここまで読んでいただきありがとうございました。