「わざ」には「業」と「技」があるんです

もう迷わない 漢字のチョイス

「業」と「技」の違いを確認しましょう

「わざ」というときに、「業」と「技」のどちらにするか一瞬迷ったことはありませんか? なんとなく使い分けていますが、ここで念のため確認しておくことにしましょう。

業:意識的に行われた行為
技:手足を使った技術や技能

ざっくり捉えれば上記のような意味になります。具体的に用例で確認していったほうが早いですね。

【業】
早業:素早くて巧みな動作や行い
・3分でできる早業レシピをご紹介します。
離れ業:人を驚かすような芸当
・サーカス団の離れ業には驚かされた。
至難の業:とても難しい行い
・これを3日でやるのは至難の業だ。
神業:神でなければできないような行い
・神業かと思うようなジャンプに目を見張った。
人間業:人間の行い
・とても人間業とは思えない出来栄えです
業師:技能(または戦略や駆け引き)にたけた人
・彼はまさに政界の業師だな。
【技】
技を磨く
・ますます技に磨きがかかっているね。
技を覚える
・新しい技を覚えたことで自信がついた。
技を競う
・集まった高校生がロボット製作の技を競った。
寝技
・柔道の寝技が決まった。

こうしてみると、「業(わざ)」は「行為」のことで特定の言い回しが多く、「技(わざ)」は技術や技能のことだと確認できますね。このあたりを使い分けのヒントにしてください。

なるほど。行為か技能かで使い分けるのね。

「業」を「ゴウ」と読むと悪い意味になるの?

「業」を単独で用いると「ゴウ」という読みにもなります。ただ、「人間の業」というと「わざ」にも「ゴウ」にも読めてしまいますので、誤読を防ぐためにルビやふりがなを添えたほうが安心です。このあたりが漢字表記の難しいところですね。

「業(ゴウ)」というのは仏教用語で、「前世の行為によって受ける現世おいての応報」のことで、「避けられない運命」や「悪運」のことです。

「自業自得」と言ったりしますが、これも「自分の行いのむくいを自分自身が受けること」の意味ですね。よい行いもしているはずですが、悪いことが起こった場合に用いられるので、「業」にはどうしても暗いイメージがつきまとってしまいますね。

「自業自得」といわれちゃうと何も言い返せなくなくなるよね。

「業」には「なりわい」という意味もあります

「業」という漢字そのものに「なりわい」という意味もあります。「なりわい」とは生活していくための仕事のことで、「なりわい」とひらがなで表記します。「生業」という字を当てることもありますが、その場合は「生業(ないわい)」とルビやふりがなで読みを明示してください。普通に読めば「生業」は「せいぎょう」になりますが、意味は「なりわい」と同じです。

・40年間、パンの製造をなりわいとしてきました。
・好きなことをなりわいにできたら最高なんですが。
・「なりわいづくり」によって移住者を増やしていきたい。

「巧み」と「匠」との違いについて

「技」というと「巧みな技」というように、「巧み」という言葉で修飾されることが多いですよね。「巧み」というのは形容動詞で、手際よく物事をしとげること、または物事にすぐれた技巧を凝らすさまのことを言います。

・巧みな話術で会場を魅了した。
・この工芸品には巧みな技が使われているね。

一方で「匠(たくみ)」というのは工作物を製作する職人さんのことです。ただし、常用漢字表には「匠」は「ショウ」という読みしかありませんので「たくみ」とひらがなにします。あるいは、どうしても「匠」を「たくみ」と読ませたい場合には、ルビやふりがなを添えると親切です。

「匠」は、熟語だとそれぞれの分野のプロフェッショナルのようなことですが、「匠」そのものに「すぐれた技能」という意味があるので、リフォーム関連のテレビ番組のように、「匠」を「技術の高い職人さん」の意味で用いることもあるようです。

師匠 巨匠 名匠 画匠 宗匠 工匠 石匠 など

劇的なものでなくていいから、リフォームしたいなあ。

「意匠」ってどんな意味?

「意匠」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、これは「(造形物に)工夫をめぐらすこと」という意味です。「意」は「考えやアイデア」、「匠」は「すぐれた技巧」ですから、「意匠が凝らされた建造物だね」であれば、「デザインが工夫された建造物だね」ということになります。

○意匠登録って何を登録するの?

アイデアというのは持ち主を特定するのが大変です。特にデザインは、思いつくまでは大変ですが、似たものを製作することは容易です。それで、特許庁に「意匠登録」してデザイン自体を保護するわけですね。

「著作権」や「商標権」なら知ってたけど、「意匠権」というのもあるんだね。